日本の政治と社会

岩波の雑誌「世界」の最新号(2024年7月号)が「スポーツと権力」と題する特集を組み、その一環として「神宮外苑再開発とスポーツ利権を問う」と題する対談を掲載している。対談者は、都市再開発に詳しい大方潤一郎とジャーナリストとして神宮外苑再開発問題にかかわってきた佐々木実である。二人はこの問題を、スポーツがからんだ利権という構図で読み解いている。事態の背景や法的問題がよく整理されていて、わかりやすい。

いわゆる「セキュリティクリアランス」制度に関する法律が4月10日成立した。これは経済安全保障に関する重要情報の取り扱いを国が認めたものに限定するという内容のものである。この法案が有する問題点は、雑誌「世界」の最新号(2024年6月号)に掲載された「『セキュリティクリアランス』制度の何が問題か」という小文(高山佳奈子著)が指摘していた。今回成立した法律は、その指摘通りに非常に問題の多いものと思われる。

岩波の読書誌「図書」(2024年5月号)が、「路上より」と題する柳広司の小文を掲載している。これは、イスラエルによるガザのジェノサイドをやめさせようと、自分のできる範囲で必死に頑張っている様子を書いたものだ。柳は、このジェノサイドを、かつての沖縄の人々が被った苦悩と比較している。あの時には、沖縄本島に上陸した米軍に追われ、島の南端の摩文仁の丘から海に追い落とされた人々が多数いた。沖縄では、住民の四分の一が殺された。ガザのジェノサイドはそれを思い起こさせる、というのだ。

イスラエルによる自国大使館への不法な攻撃にイランが反撃したことをめぐり、欧米諸国はこぞってイランを非難した。それにあわせたのだろう、日本の某外務大臣もイランを非難した。これについては典型的なダブルスタンダードだとの批判がある。イスラエルの国際法を無視した不法な攻撃には目をつぶり、イランだけを一方的に避難しているからだ。紛争の原因を作ったものの責任は棚上げして、反撃したものの責任ばかり云々するのは筋の通らない話だ。

NHKスペシャル番組「未解決事件」シリーズのFile10「下山事件」を見た。前後二編で構成され、前半はドラマ仕立て、後半はドキュメンタリー仕立てになっている。前半がよくできていた。森山未来演じる検事の布施健が、事件の真相を追い、ついに真犯人を突き止める経緯を描く。真相は、アメリカの占領当局が、国鉄への見せしめとして行ったというものだ。当時日本はアメリカの統治下にあり、アメリカを刑事犯として裁くことはできなかった。しかし、1952年に独立を回復した以後も、日本の検察はアメリカに対して遠慮しつづけた。そのことは検察に後ろめたさを感じさせる要因となり、検察はその意趣晴らしのために後日ロッキード事件を裁いた、というような構成になっている。ロッキード事件を総指揮したのは、下山事件を担当した布施だったので、意趣晴らしというのは非常に説得力のある見方だ。

雑誌「世界」の最新号(2024年3月号)が「さよなら自民党」と題する特集を組んでいる。今大騒ぎになっている自民党各派閥の裏金問題が、自民党にとってどんな問題を投げかけているのかを批判的に検証するような内容である。最も迫力を感じたのは、佐々木毅と山口二郎の対談。「90年代政治改革とは何だったのか」と題するこの対談のなかで、佐々木は、30年前にも同じような不祥事(リクルート事件)が起き、そのために政治改革をやったはずなのに、その改革の理念がちっとも実現せずに、またぞろ同じような不祥事が起きたと言って、自分たちの対談が失われた三十年を地で行くようなものになるんじゃないかと「恐れている」と言う。

日本のGDPがドイツのそれに抜かれ、今までの三位から四位に転落したそうだ。その原因は対米為替レートで円安になったためで、名目上の比率ではドイツに抜かれたが、実質的にはそんなに悲観することではないという意見もあるようだが、円安を含めて日本の経済力が弱まっていることを反映したものだととらえるのが自然なことであろう。

大川原化工機冤罪事件については、小生は雑誌「世界」の最新号(2024年1月号)に寄せられた文章「大川原化工機『冤罪』事件の深層」(石原大史)によって知った。これは事件を取材したNHK記者によるもので、警視庁公安部による恣意的な犯罪捜査を厳しく批判したものであった。事件の概要と批判の内容については、当該文章にゆずるとして、その事件をめぐって起こされていた損害賠償請求訴訟の一審判決が12月27日に東京地裁で出されるというので、それを注目していた。地裁は、国(検察庁)と都(警視庁」の責任を認め、賠償を命じる判決を出したそうだ。賠償額は国が約1億5800万円、都は約1億6200万円である。

岩波の雑誌「世界」の最新号(2024年1月号)の第二特集は「ディストピア・ジャパン」である。岩波が出版した「日没」の作者桐野夏生へのインタビューを含んでいるので、おそらくこの特集がイメージしているディストピアとは桐野の問題意識につながるのであろう。その桐野は、自分の小説が「反社会的」と受け取られている風潮に危うさを感じているという。そうした風潮は一般の国民たちによって担われており、それを権力が利用するとディストピアが実現してしまう怖さがある。コロナがそうした風潮を後押しした。自粛警察とかマスク警察といった現象は、国民による下からの検閲だ。国民の間に広がるこうした不寛容さに、桐野は日本人の本質を見た気がするという。

国策の半導体企業として岸田政権が前のめりになっいるラピダス。政府はその育成に1兆円を投じる方針だそうだ。名目は経済安保というので、反対する者はいない。だが、果たして成功するかどうかについては、懐疑的な見方が多いようだ。半導体産業は、一時は日本が世界をリードしていたこともあって、政府はその復活に執念を持ち、電器産業を結集してエルピーダを立ち上げた経緯があるが、失敗に終わった。今回もその轍を踏むのではないかと危ぶむ見方が多いのだ。

国民民主党が立憲民主党の挨拶を断るなど、距離を置く姿勢を強めている。立憲側は、次の衆議院選挙に向けて野党の連係を模索し、その一環として党首対話を呼びかけたのだが、国民側からそれを拒絶した。理由は、立憲が共産党との連携に前向きな姿勢を見せていることだ。国民は反共が党是のようなので、共産党と連係しようとする党とは一緒に行動できないということらしい。

雑誌「世界」の最新号(2023年11月号)が、「大阪とデモクラシー」と題する特集を組み、七本の小文を掲載している。大阪とデモクラシーの関係といえば、維新の会のことが真っ先に思い浮かぶが、この特集は、維新をとりげたもののほかに、万博問題とか子供の本のこととか、結構幅広くカバーしている。

雑誌「世界」の最新号(2023年11月号)が、「劣化したリーダーはなぜ増えたのか?」と題して、辻野晃一郎と立石泰則の対談を掲載している。辻野はソニー出身の実業家、立石は実業界を取材するジャーナリストだそうだ。それぞれの立場から、今の日本のリーダーの劣化ぶりを指摘している。どちらも実業界とその周辺に身を置いているから、勢い実業界のリーダーを話題に取り上げる。かれらによれば、実業界のリーダーの劣化は、なににもまして日本の劣化ぶりを物語っているということらしい。

沖縄県辺野古の埋め立て工事についての知事の認可をめぐって、先の最高裁判決をうけて国側が知事に対して認可の「勧告」をしたところ、知事がそれに従う姿勢を見せないとして、今度は「指示」に切り替えた。指示にも従わねば、次は国による代執行の手続きに入る意向ということらしい。代執行というのは、この場合、国の国土交通大臣が知事に代わって認可を行うということだ。

ウクライナ戦争をめぐって、日本でも様々な言説が飛び交っている。とりわけ防衛省関係の実務家が発する言説は、NHKをはじめ様々なディアで花形扱いの観を呈し、かれらの発する日米同盟堅持と日本の防衛力増強というメッセージが、いまや議論の基本的な前提のようになってしまっている。そういう風潮のなかで、小泉悠は比較的無色な立場をとろうとしているように見える。だが、今回彼が、雑誌「世界」の最新号(2023年10月号)に寄せた小文を読むと、彼もまた基本的には、防衛省の実務家と同じような立場に立っていることを、みずから認めているようである。だから防衛省的な見方はいまや、日本の安全保障論の標準になっていると受け取れる。

辺野古埋め立てをめぐる裁判で、最高裁が沖縄県の上告を退け、国側の言い分を一方的に飲み込む判決を出したことで、この問題はほぼ国側の意向にそって決着する見込みとなった。政府としては言い分が通って万々歳というところだろうが、日本のためには決してそうは言えない。なぜなら最高裁は、地方自治法の規定を恣意的に解釈して、実に政治的な判断をしたからであり、その政治的な判断は、一見日本政府に忖度しているように見えて、実はアメリカ政府の意向を踏まえたものだからだ。これでは、最高裁は日本国と日本国民のために存在するのではなく、ホワイトハウス(アメリカ政府)のために存在するということになる。最高裁は日本の国権を担う機関ではなく、ホワイトハウスの出先機関として、アメリカの利益を支えるための機関だというべきである。

日本が福島汚染水を海洋放出したことへの反応として、中国が日本の水産物の全面禁輸に踏み切ったことで、大変な騒ぎになっている。水産物を所管する農水大臣などは、中国がそこまでやるとは予想していなかったなどと馬鹿なことをいうありさまだ。本気でそう思っているなら、本物の馬鹿者というほかはない。岸田首相までが中国は科学的に振る舞えなどとわけのわからないことを言う始末だ。岸田首相がどんなに中国に批判めいたことを言っても、中国にとっては馬耳東風だろう。まして日本のメディアが、馬鹿の一つ覚えのように、中国は冷静に振る舞えと叫んでも、何を言っているのかと馬鹿にするばかりだろう。

岸田政権は、イギリス及びイタリアと共同開発する予定の戦闘機を、外国に輸出する方針を決めたそうだ。それとあわせ、殺傷能力のある武器を外国に輸出することも考えているようだ。もしそれが実現すれば、日本は従来の平和主義の政策を捨てて、欧米並みの軍事産業国家になることであろう。

岸田政権が、福島の汚染水を24日から海洋放出するよう決定したそうだ。21日に行った漁業関係者との面談で、一定の理解が得られたからというのがその理由だ。日本政府はこれまで、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束してきたので、なんとかして関係者つまり漁業団体の理解を得たいと願ってきたわけだが、21日の面談では、漁業関係者は「反対変わらぬ」と明言しているので、さすがの岸田首相も、十分な理解を得たとは言えなかった。それでも、一定の理解を得たとして、今回の決定に踏み切ったわけだ。漁業関係者としては、なかなか納得できないところだろうが、しかしお上の意向には逆らえず、また、漁業補償を含めた対策の予算措置をちゃんとやってもらいたいと言ったようだから、なんでも反対ということではないらしい。いかにも日本的な決着の付け方である。

山口県の上関町が、使用済み核燃料の中間処理施設の建設に事実上同意した。いまのところ、施設建設に向けた調査を受け入れたということらしいが、建設を前提としない調査などありえないので、事実上建設を受け入れたといってよい。なぜそんな決断をしたのか。町長はじめ推進派は、町の持続可能な存続のためには、ほかに選択肢はなかったといっているが、果たしてそうか、という疑問はある。だが、何といっても町の当事者が自主的に判断したことなので、第三者があれこれ言うことはないかもしれない。

1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11



最近のコメント

  • √6意味知ってると舌安泰: 続きを読む
  • 操作(フラクタル)自然数 : ≪…円環的時間 直線 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…アプリオリな総合 続きを読む
  • [セフィーロート」マンダラ: ≪…金剛界曼荼羅図… 続きを読む
  • 「セフィーロート」マンダラ: ≪…直線的な時間…≫ 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…近親婚…≫の話は 続きを読む
  • 存在量化創発摂動方程式: ≪…五蘊とは、色・受 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…性のみならず情を 続きを読む
  • レンマ学(メタ数学): ≪…カッバーラー…≫ 続きを読む
  • ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな: ≪…数字の基本である 続きを読む

アーカイブ