美を読む

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ルドンがポール・ゴーギャンと出会ったのは、1886年の第八回印象派展の会場であったらしい。八歳年下のゴーギャンのほうから、ルドンに敬意を表して接近したといわれる。ゴーギャンはルドンの画風に強くひかれ、その幻想的な雰囲気とか、豊かな色彩に影響されたようである。

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ルドンは仏陀に強い関心を持っていたようで、仏陀をモチーフにした作品を結構作っている。いづれも仏陀の精神性を表現したもので、カラフルな色彩のなかに、静かな瞑想のような雰囲気を漂わせている。

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レオナルド・ダ・ヴィンチは、いまでこそ世界絵画史上の巨匠ということになっているが、その評価が確立したのは20世紀のことである。そうしたダ・ヴィンチ評価の動きに、ルドンも深くかかわっていた。「レオナルド・ダ・ヴィンチ頌(Hommage à Leonardo da Vinci)」と題されたこの作品は、そんなルドンのダ・ヴィンチへの敬愛を表現したものである。

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カリバンは、シェイクスピアのロマンス劇「テンペスト」に出てくるキャラクターである。「野蛮で奇形の奴隷」と紹介されており、また登場人物の口をとおして「魚と怪物のあいの子」と呼ばれ、具体的なイメージとしては、頭は魚で、鰭が手足のように伸び出ている。ヒエロニムス・ボスの奇妙な作品「干草車」に描かれている魚の怪物に近いイメージだ。

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キュクロプスはギリシャ神話に出てくる単眼の巨人族。火山ないし鍛冶屋の神といわれるが、ホメロスの「オデュッセイア」には旅人を食らう凶暴な怪物として描かれている。ルドンのこの作品は、キュクロプス族の一人ポリュメーモスが、ガラテーアという娘に恋い焦がれるさまを描いている。

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「セーラーカラーをつけたアリ・ルドンの肖像(Portrait d'Arï Redon au col marin)」は、ルドンの次男アリをモデルにした作品、ルドンは、長男のジャンを1886年になくし、深い悲しみにとらわれたのだったが、1889年に、50歳を前にして次男を得た。この子を得たことで、一時衰えた創作意欲が復活したという。

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一時期のルドンは、聖書に取材した宗教的なテーマを描いた。「聖心(Sacré-Cœur)」と題するこの絵もその一つ。キリストのイメージをストレートに表現している。キリストをモチーフにした作品には、受難とか悲しみといったものを表現するものが多いのだが、この作品は、タイトルにあるとおり、キリストの心を表現している。

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ルドンは、1880年代の半ばごろに、本格的な油彩画の制作に励むようになった。石版画の制作もやめたわけではない。1890年代半ばごろまで石版画の制作を続けている。だが主力は次第に油彩画のほうに注がれるようになった。「アベルとカイン」と題されたこの作品は、かれの本格的な油彩画の初期の傑作である。

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(おそらく花の中に最初の資格が試みられた)

「起源(Les origines 1883年)」はルドンの三番目の石版画集で、八点の作品で構成されている。豚の怪物が暗闇の中で目覚めるといった構図の作品からはじまる。目覚めは誕生、つまり生命の起源の隠喩だろう。以下いづれも、何らかの形で「起源」をテーマにしていると受け取れる。

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(孵化)

ルドンは、石版画家として世間に現れた。最初の石版画集「夢の中で」を刊行したのは39歳の時だから、画家としてのスタートは遅かったといえる。それまでは、つまり若いころは、あまりさえない風景画を描いており、ほとんど注目されることはなかった。ルドンに石版画の手ほどきをしたのは、風変わりな浪漫派芸術家ブレダンである。この男はシャンフルーリの小説「犬っころ」のモデルになったことでも知られる。画家としては、ロマン派に属し、古典的な絵画ではなく、激情的な雰囲気を感じさせる画風である。ルドンは、技術のみならず、画風もブレダンから学んだようである。


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「ビスマルク氏の悪夢(Un couchemar de M.Bismarck)」と題されたこの作品は、普仏戦争に触発されて制作したもの。この戦争で、フランスは初戦で健闘したものの、たちまち攻め込まれ、ルイ・ナポレオンが捕虜になるという不名誉な結果となった。そのことで、ナポレオンの第二帝政は崩壊する。

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「わしは鳥じゃ(Je suis oiseau, voyez mes ailes. Je suis souris, vivent les rats.)」と題されたこの石版画は、当時の王党派の大物エミール・オリヴィエを風刺した作品。オリヴィエは、二月革命の頃は共和主義者だったが、のちに熱心なナポレオン主義者に転向した。転向後のかれはナポレオンの懐刀になり、普仏戦争に向かって国民をかりたてた。

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国際問題に興味を見出したドーミエは、やがて戦争の惨禍に注目するようになる。ヨーロッパ諸国間の戦争が、武器の近代化によって悲惨なものとなったことがその背景にある。近代化によって高性能になった武器は、人間を大量殺害することを可能にした。そうした傾向にドーミエは危機感を覚えたのだと思う。

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国内向けに政治風刺を行うことをはばかったドーミエは、風俗版画に力を入れるようになった。「写真術を芸術の高みに引き上げるナダール(Nadar élevant la Photographie à la hauteur de l'Art)」と題するこの石版画はその一枚。当時興隆しつつあった写真術を象徴する人物ナダールをモチーフにしたものだ。ナダールといえば、ボードレールの肖像写真があまりにも有名だが、ドーミエとも親交があった。ドーミエはナダールを商売敵と考えていたようだ。

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1850年代の後半には、ルイ・ナポレオンの専制が強化され、フランスの権力を風刺することが困難となった。監獄にぶち込まれる危険が高まったのである。そこでドーミエの風刺精神は海外に向けられた。海外のうちでも当面ドーミエの興味を引いたのは中国だった。中国はアヘン戦争に敗けてから西欧植民地主義の餌食になりつつあったが、それは中国自身が頑迷固陋で進歩とは縁がないからだ、そう考えたドーミエは、中国の野蛮さを風刺の対象としたのであった。

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1863年から1866年にかけて、クリミア半島を舞台にして、英仏及びオスマントルコの同盟軍とロシアと間で戦争が起こった。世に「クリミア戦争」と呼ばれている。この戦争にドーミエは関心を示し、フランス人の立場から野蛮なロシア人をこき下ろす版画を作った。「北方の熊(L'oues du nord)」と題したこの石版画は、ロシアを罵倒した最たるものである。

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ナポレオン三世は1853年にオースマンをセーヌ県知事に任命し、首都の大改造を指示する。オースマンは壮大な計画をたて、パリの大改造を実施する。今日のパリの街の姿は、その結果実現したものである。道路を広げ、大きな広場を作り、整然とした街並みを整備する一方、パリの街区も従来の十二区から二十区へと拡大する。パリ大都市圏の成立である。

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「シャンゼリゼへ!( Aux Champs-Elisee)」と題されたこの石版画も、「観閲の日」と同じく、ラタポアールらナポレオン派の策動を批判した作品。これは、仕込み杖をたくさん抱えたラアポアールが、シャンゼリゼ大通りに向かう群衆に対して、仕込み杖で大統領官邸を警護しようと呼びかけている様子を描くとされる。

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ルイ・ナポレオンがクーデタを起こすのは1851年12月のことで、その翌年には皇帝に即位するのだが、ナポレオン派は、それ以前から活発な活動ぶりをみせていた。「観閲の日々(Un Jour de Revue)」と題したこの石版画は、そうした策動の一端を批判したもの。

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ルイ・ナポレオンが大統領に当選したことを記念して、「十二月十日博愛主義協会」という組織が結成された。ナポレオンの最大の支持組織である。その組織は、ラタポアールとカスマンジューという二人の人物によって代表されていた。「ラタポアールとカスマンジュー(Ratapoil et Casmanjou)」と題するこの石版画は、かれらを批判的に紹介した作品である。

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