美を読む

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アテナはギリシャの都市アテネの守護神であるが、ギリシャ神話では戦いの女神とされている。鎧を着て、雄たけびの声を上げながらゼウスの頭から生まれたとされるこの女神が、どういういきさつで商業都市アテネの守護神になったか、そこには興味をそそる物語があったに違いない。

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クリムトには裕福な実業家のパトロンがいた。当時のオーストリアの画家には、クリムトに限らずパトロンがついていたものだが、クリムトや分離主義の芸術家を熱心に応援していたのは、ユダヤ人実業家たちだった。鉄鋼業のウィトゲンシュタイン、繊維業のヴェルンドルファー、金属産業のクニップスといった人々だ。クリムトは彼らの家族のために肖像画を描いた。クリムトの肖像画は非常にリアルでしかも芸術性に富んでいるというので、ウィーンの社交界では名声が高かったようだ。

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クリムトがオーストリア政府からの注文を受けて作成した「ウィーン大学講堂の天井画」は、クリムトという画家を理解するための鍵を与えてくれる。クリムトはこの仕事のために三点の天井画を描いたのだが、それらに自分の芸術上の信念を盛り込んでいたという意味で、非常にメッセージ性の高い仕事となった。ところが、これら三点の天井画は、いずれも大学当局や政府から激しい拒絶にあった。そこでクリムトは、その拒絶に屈することなく、これを買い戻したのであったが、それらの作品は結局失われてしまった。権力に対抗して自分の芸術的良心を貫いたクリムトだが、その良心は報いられなかったわけだ。一方クリムトと同じくこの仕事の一部を請け負ったフランツ・マッチュは、注文の趣旨にしたがった作品を作ったおかげで、いまでもウィーン大学の講堂を飾っている。もっともそれが高い評価を受けることはないのだが。

クリムトのエロス

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十九世紀の末から二十世紀の初頭にかけて、ウィーンはパリと並んでヨーロッパの精神文化の中心地だった。建築、美術、絵画などの諸芸術や、フロイトの心理学、ウィトゲンシュタインに代表される哲学など、ウィーンはさまざまな学芸分野で、ヨーロッパをリードしたのであった。その時代のウィーンをベル・エポックと呼ぶこともある。この言葉は同時代のパリについて用いられるのが普通だが、ウィーンもまたパリに負けないほどの文化的なオーラを放っていたのである。

雪の中の労働者:ムンク

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男性美を追求したムンクがたどりついたのは、労働者の働く姿に現われた男の力強い美しさだった。晩年のムンクは、こうした労働者像をいくつも描いたが、「雪の中の労働者」と題するこの絵は、その代表的な作品だ。

水浴する男たち:ムンク

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ムンクの作風は1907年ごろに変化した。「マラーの死」はその魁である。その絵は、暗い題材をテーマにしているにかかわらず、画面は明るく、筆致ものびのびとしている。それまでの陰鬱な画面作りからの、百八十度といってよいような転換振りである。

桟橋の少女たち:ムンク

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「桟橋の少女たち」と題するこの絵は、不思議な空間感覚をもたらす。桟橋の描き方が、遠近法に基づいているように見えながら、消失点のところにある桟橋の先端が曖昧なかたちで背景の中に埋没しているために、空間がゆがんでいるような印象をもたらすのだ。家の周りの柵の描き方も、周囲との間に不調和な印象を与える。

生命のダンス:ムンク

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「生命のダンス」と題するこの絵は、「生命のフリーズ」の最後を飾る大作である。題名から生命を謳歌するように思え、また一見してそういう印象が伝わってこないでもないが、「生命のフリーズ」のほかの作品同様に、かなり屈折した思いがこの絵にも込められているようだ。

赤いアメリカ蔦の家:ムンクの不安

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「赤いアメリカ蔦の家」と題したこの絵も、ムンクとトゥラのとの不安定な関係を描いたのだと思われる。赤いアメリカ蔦の家は、ムンクとトゥラの愛の巣のはずなのだが、ムンクはそこから逃げ出そうとしているのだ。

メタボリズム:ムンクの愛

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ムンクは、1898年にトゥラ・ラーシェンという女性と恋仲になった。この女性は若々しくて性的魅力に富んでいたが、性格に常軌を逸したところがあった。独占欲が強く、ムンクの近くを離れようとせず、つねに激しいセックスを求めた。すでに中年に差し掛かっていたムンクは、この女性の異常な性欲に悩まされた。そのために一時期、創作意欲を失ったほどだった。

嫉妬:ムンクの不安

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ムンクの友人の一人にポーランド人スタニスラフ・プシビシェフスキがいた。彼の妻ダグニーは性的な魅力に富んだ女で、ムンクも惚れていたようだ。彼女はまた、ストリンドベルヒほか数人の男を誘惑しているという噂もあった。彼女は最後には夫の友人によって殺されてしまうのだが、それは彼女の夫に対する裏切りが原因だったと推測されている。

不安:ムンク

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「不安」と題するこの絵は、「叫び」と並んでムンクの代表作である。構図的にも「叫び」と良く似ている。赤い夕空を背景にして、湖にかかった橋の上を人々が歩いている。「叫び」の場合には、一人の人物に焦点が当てられていたが、この絵の場合には、群集がモチーフになっている。群集の心を捉える不安、それがこの絵のテーマだ。

マドンナ:ムンクの不安

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1890年代のなかばに、ムンクは「生命のフリーズ」と称する一連の作品を制作する。「マドンナ」と題するこの絵は、そのシリーズの中核となるものである。この絵を通じてムンクは、生命と死を二つながら表現しようとしたといわれるが、どこに生命と死を読み取るべきか、さまざまな解釈がなされてきた。

思春期:ムンクの不安

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「思春期と題したこの絵を、ムンクは1895年に公開したが、たちまち厳しい批判にさらされた。批判はスキャンダルに発展し、ムンクはノルウェーの批評界から、集中攻撃を浴びせられた。少女の裸体を描くというのは、当時のノルウェーでは、恥ずべき猥褻な行為であり、頽廃の極みだったのだ。後にムンクの作品は、ナチスによって「頽廃芸術」の烙印を押されたが、その主な理由がこの作品にあった。

叫び:ムンクの不安

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ムンクといえば条件反射的に「叫び」が思い浮かぶほど、この絵はムンクの絵の中でももっともインパクトの強い作品だ。精神世界を表現することを最大のコンセプトとしたムンクにとって、人間の叫びはもっとも精神性を感じさせる事柄だったのだろう。この絵の中の人物の表情を見ていると、叫び声を通じて彼の内面がそのままむき出しにされているように感じられる。

吸血鬼:ムンクの不安

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「吸血鬼」と題したこの絵のモチーフは、男の血を吸う女である。この絵は一見すると、女が男を抱擁しているように見えるのだが、実はそうではなく、女が男の首筋に歯を立てて、男の血を吸っているのである。

声:ムンクの不安

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「声」と題するこの絵は、森の中で、月光を反射した湖を背後にして立つ女性を描いたもの。この絵の特徴は、モチーフの女性が朦朧としたイメージになっていることと、それに対比して背景が強い色価で描かれていることだ。主な目的は神秘的な風景を描くことで、女性はその神秘性を目出させる為の小道具だといわんばかりである。

病室の死:ムンクの不安

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ムンクの家族は、両親とムンクほか四人の子ども、計七人からなっていた。そのうち母親が、ムンクが五歳のときに、姉のソフィエが、ムンクが十三歳のときに亡くなった。こうした家族の死は、ムンクや残された家族に大きな影響を及ぼした。特に父親の悲嘆ぶりは甚だしかった。そうした悲哀がムンクに、不安に親和的な雰囲気を付与するようなった原因だろうと考えられる。

メランコリー:ムンクの不安

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「メランコリー」と題するこの絵は、自然の中で絶望する男のイメージを表現したもので、1890年代の初期に、ムンクがたびたび描いたモチーフだ。このヴァージョンでは、男の頭部だけが絵の右手片隅に描かれているが、別のヴァージョンでは、立ったままうなだれた男とか、背中を丸めて座っているものもある。

カール・ヨハン街の夕べ:ムンクの不安

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ムンクは、印象派や後期印象派の画家を始め、さまざまな画風を吸収しながら自分の作風を確立していった。その画風変遷のプロセスを物語るものとして、カール・ヨハン街をテーマにした三点の作品が上げられる。1889年の「カール・ヨハン街の軍楽隊」はマネの強い影響がうかがえるし、1891年の「春の日のカール・ヨハン街」はスーラ風の点描画法で描かれている。そしてここに紹介する1892年の「カール・ヨハン街の夕べ」に至って、やっと今日ムンク風といわれる作風に近づいているわけである。

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