「達磨の耳かき図」も、「一休と地獄太夫図」同様、高僧と美女の戯れあう姿を描いたもの。高僧が美女にうっとりとしたり、浮かれたりするところを描くのがミソだ。
この絵の中の達磨は、美女に耳かきをしてもらって、うっとりとしている。美女は達磨の大きな耳たぶを左手で押さえながら、右手に持った耳かきで達磨の耳の穴をくすぐっている。耳の穴をくすぐられると気持ちがよくなるのは、我々凡百だけではない。達磨法師のような高僧も例外ではない、とばかりに、この絵の中の達磨は気持よさような顔つきをしている。
達磨といえば、白隠禅師描くところの謹厳な表情が思い浮かぶが、この絵の中の達磨にはそうした謹厳さはない。その表情は我々俗人となんら変わるところはない。
達磨の膝のあたりには、大きな毛玉が置かれているが、これもやはり耳を扱うための小道具のようである。これで耳のあたりを払われると、気持ちがよさそうだ。
女性の衣装には文様が詳細に描かれているのに対して、達磨の衣装はざっくりと描かれている。この対比も面白い。
(明治四年以降 絹本着色 61.0×75.2㎝ 太田記念美術館)
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