太公望図:尾形光琳

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太公望は中国の伝説中の人物で、周の文王を補佐して天下の三分の二を平定したとされる呂尚のこと。釣糸を垂れてのんびりと過ごす太公望のもとに文王が足を運んで誘う場面は、徳川時代の武家たちに喜ばれたテーマで、さまざまな画家がそのモチーフを絵にした。光琳は、文王を除いて、太公望だけに焦点を当て描いた。

絵は、川辺に腰を下ろし、転寝をしているらしい太公望の姿を描く。太公望は釣をしているはずなのだが、この絵からは釣糸を垂れている様子はうかがわれない。

自然の描写は極めて単純化されており、装飾的な感じが伝わって来る。金地のまま残された空間は何を表しているのか。それを区画する線を含めていくつもの線が認められるが、それらがいずれも太公望に向かって弧を描いているのが面白い。

太公望の図柄は、舶載された「仙仏奇綜」による。宗達派の絵を参考にしたと思われる。

(紙本着色 二曲一隻 166.6×180.2㎝ 京都国立博物館 国宝)







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