髑髏と蜥蜴:河鍋暁斎の鳥獣画

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「髑髏と蜥蜴」と題したこの絵は、「風俗鳥獣画譜」のなかの一枚。このシリーズは明治二年から三年にかけて、十四図が描かれた。いずれも絹本に金箔を貼り、極彩色で描かれている。テーマは木枯らしの霊だとかお多福だとか、暁斎一流の戯画的なものである。

この絵は、髑髏の目から這い出す蜥蜴を描いている。これによって暁斎が何を意図したのか、よくはわからない。蜥蜴は異常に長いので、足のはえた蛇のようにも見える。その蜥蜴の目つきに愛嬌がある。

蜥蜴をよく見ると、一匹だけではなく複数いるようにも見える。鼻の奥とか顎の隙間から、別の個体らしきものの一部がのぞいて見えるからだ。髑髏の歯が上下並んで描かれているが、下のほうには顎が伴っていない。これは暁斎のトリックだと思う。そういえば髑髏の描き方にも誇張があるようだ。

背景に荒涼たる風景と寒々とした感じの月を配して、前景のモチーフを盛り立てている。維新前後の殺伐とした時代の雰囲気を表わしたつもりなのだろうか。

(明治二年頃 絹本着色 19.1×14.6cm)






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