枯木寒鴉図:河鍋暁斎の鳥獣図

| コメント(0)
kawa018.1.jpg

「枯木寒鴉図」と題したこの絵を暁斎は、明治十四年の第二回内国勧業博覧会に出品した。それについてちょっとしたエピソードがある。この絵は、実質的な最高賞であった妙技二等賞牌をもらったのだが、それに気をよくした暁斎は売却価格として百円の値段をつけた。すると鴉一羽に百円は高いと悪口を言われたのであった。だが、暁斎は、これは自分の画業の集大成であるといって譲らなかった。結局この絵は、日本橋の菓子屋栄太郎の主人が言い値で買ってくれたので、暁斎は大いに面目を施した。

明治十四年当時の百円といえば大金である。当時米十キロが六十銭、大工の手間賃が一日五十銭の時代である。現在の大工の手間賃は一日二万円くらいだから、それで逆算すると、当時の一円は現在の四万円に相当する。当時の百円は四百万円になる計算だ。これが高いか安いかは、俄かには決められないだろう。いずれにしてもこれ以後、暁斎の鴉の絵には高い値段がついたそうである。

題名とおり枯木の上に鴉が止まっている様子を描いている。枯木はおそらく一筆書きでさらりと描いたのであろう。鴉のほうは、筆を重ねてはいるが、そんなにしつこさは感じさせない。

kawa018.2.jpeg

これは鴉の部分を拡大したもの。やや薄めの墨で下書きしたうえから、濃い墨を重ねたのだろうと思われる。

(明治十四年 掛軸 絹本墨画 148.2×48.2㎝ 栄太郎総本舗)







コメントする

アーカイブ