トランプの対中国準戦時政策

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トランプの対中国政策が過激さを増している。中国からの輸入に全面的に関税をかけることで、中国との経済戦争に点火させることをいとわないばかりか、最近は政治的・軍事的側面でも対中国全面対決をにおわす政策を打ち出している。中国を意識した国防力の強化や、リムパックから中国軍を全面的に締め出すといった政策だ。こうした政策を目のあたりにすると、トランプは本気で対中戦争に踏み切るつもりではないかと思わされるところだ。

こうしたトランプの政策については色々な見方がある。有力なのは、これはトランプ一流の不動産屋風のこけおどしであって、いわゆるディールの一環なのだから、そう深刻に受け取らなくてもよいといった見方だが、最近のトランプの言動を見ると、そう楽観的にはなれない。

トランプの人種差別意識は相当のものだし、本人も時としてそれを隠さない。その人種差別意識が、今回の対中国の言動についても大きく働いているとはいえるだろう。アメリカ人が黄色人種に憎悪感を持つのは、インディアン殺しにやっきになっていた時代以来のことで、アメリカ史というのは、インディアンに象徴される黄色人種を叩き潰して来た努力の足跡と言ってよい。アメリカ人は、というよりアメリカ大陸にやって来たヨーロッパ人種は、アメリカにもともといた原住民のインディアンをせん滅することで、自分たちの国家を作って来たという歴史があるし、アメリカ大陸内からインディアンがせん滅された後には、インディアン殺しの情熱はアメリカ大陸の西側の延長に存在した黄色人種に向けられた。ハワイがそうだし、フィリピンがそうだし、また一時期の日本がそうだった。そういう大きな歴史的な観点から見ると、アメリカが中国に大きなライバル意識というか、敵対心を持つのは自然の勢いといえる。トランプはその敵対心をもっとも素朴な形で抱いているのではないか。かれにとっては、中国人は悪いインディアンなのであり、国境を越えて来るメキシコ人は有害なインディアンであり、日本人は無害なインディアンということになるのだろう。

一方中国の方では、阿片戦争以来西欧諸国によって侵略されて来た歴史があり、そのことについて民族として大きなこだわりを持っている。そういう背景の中で、アメリカはもっとも遅れてやってきた侵略者であるというような受け止め方をしている。そういう受け止め方は、一時期弱まって米中関係が好転した時もあったが、それは歴史上の例外事であって、米中関係の王道はやはり正面衝突という以外にはないのではないか。

そうとらえると、今後の米中関係は、正面衝突に向かって進む可能性が極めて強い。両者の対立は一時的でかつ偶発的なものにはとどまらず、歴史的な背景を背負った必然的な対決にすすむ蓋然性が高い。トランプにとって中国は、身の程知らずにアメリカに逆らう悪いインディアンなのであり、叩き潰して屈服させなければならぬ相手である。中国にとってアメリカは、自分を呑み込もうとしている悪い龍である。つまり互いに相手を悪者イメージで見ているわけだ。その当事者双方にもっと冷静になれといっても、なかなかむつかしいかもしれない。





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