
「暁斎楽画」は鳥獣草木を描いたシリーズで、乾坤の二巻からなる。鶏と獺をモチーフにしたこの絵は、坤巻の中の一枚。互いににらみ合う鶏と獺を描いている。鶏は鑑賞用の派手な種類、獺のほうはいまや絶滅してしまったとされる日本獺を捉えている。
鶏のほうは羽を大きく広げて威嚇している。一方獺のほうは身をかがめて鶏の攻撃をかわし、あわよくば鶏にくいついて反撃しようとしている。両者とも視線を相手に向け、油断あいならぬといった構えである。
鶏が興奮しているさまは、羽が抜け落ちて宙に飛び散っている様子からわかる。羽を広げて威嚇するだけでなく、左足を持ち上げて相手を蹴飛ばそうといった意気込みだ。一方獺のほうは、たくみに身をひるがえし、鶏の一撃をかわそうとしている。おそらく互角の戦いなのだろう。
この絵から読み取れるように、暁斎は動物の動きを生き生きと表現するのにたけていた。このように躍動的な絵は、ほかに例を見ないのではないか。
(明治14年 判本二巻 22.5×15.0×二枚 河鍋暁斎記念美術館)
コメントする