トランプ対メディアの戦い

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ドナルド・トランプとアメリカ・メディアが正面から対立していることは周知の事実だ。トランプはメディアをフェイクニュースと言って罵り、メディアはトランプを不誠実なデマゴギーだと言って罵っている。両者はいわば正面衝突の観を呈している。この正面衝突あるいは対立の勝者はどちらのほうか。答えはドナルド・トランプである。その理由を、NEWSWEEK の最新号の記事が分析している(President Trump Has Defeated The Media By Ben Shapiro)。

まず、世論がこの戦いをどう見ているか。ポリティコ等が実施した最近の世論調査によると、トランプはアメリカの分断を助長していると答えた人は56パーセントに上る。大多数のアメリカ人はトランプを、国民を統合より分断に駆り立てていると見ているわけだ。一方、メディアこそアメリカの分断を助長していると答えた人は64パーセントに上った。ことアメリカの分断ということについては、メディアのほうが罪深いと考えている人のほうが多いわけだ。これはメディアにとっては、ショッキングな事実だろう。

なぜ、こうなるのか。この記事はその理由を次のよう説明している。大統領を含めて政治家というものは、そもそも嘘をつくように出来ている。だから、彼らが嘘をついたからといって、たしかによくないことではあるが、その政治家を決定的に排斥するまでには至らない。一方、メディアのほうは、社会の公器として、真実とか事実を正確に報道することを期待されている。国民の大多数がメディアに求めているのは、そういった真実とか事実を国民に知らせることであって、自分の意見を国民に押し付けることではない。ところが、トランプとメディアの戦いは、多くの人々の目には、意見の押し付け合いのように映る。このことは、メディアのほうにマイナスに働く。それで、トランプよりメディアのほうに厳しい結果が出たということなのだろう。

この記事は、トランプとメディアの戦いを、次のような面白い話にたとえている。二人の男が熊に追いかけられている。そのうちの一人がランニングシューズに履き替えた。それを見た別の男は、そんなことをしたって熊を出し抜くことは出来ないと言った。すると最初の男は、熊を出し抜くことができなくても、君を出し抜ければよいのだと答えた。この場合の熊にあたるのが、真実とか信頼というわけだ。

たしかに、ある事柄でもめている時に、世の中の目をくらませる手段として、公衆の面前で、事柄の中身をごちゃまぜにして、何が本質的に重要なことなのかを曖昧にし、そのことで喧嘩両成敗のようなかたちで、自分の責任を逃れようとすることは、よく見られることである。トランプはそのことをよく知っているのだろう。真実が問題な時に、真実そのものは棚上げして、自分と異なる意見を言う者との間に、意見のやりとりをして見せることで、何が真実かではなく、どちらがましなことを言っているかに、問題をすり替えてしまう。そうなると、もともと真実を期待されている人よりも、口先で相手を攻撃する人の方が有利になる場合がある。そのことをトランプは良く知っていて、口汚い罵倒を繰り返しているのだと思う。トランプはトランプなりにしたたかなディーラーだということだろう。





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