八橋図屏風:尾形光琳

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「燕子花図屏風」の製作からほぼ十年後、尾形光琳はほぼ同じモチーフの作品を再び手掛けた。この「八橋図屏風」である。どちらも伊勢物語第九段八つ橋の場面に取材している。これらを見比べると、共通点と相違点とが浮かび上がる。共通点としては、八つ橋の場面で出てくる業平以下の人々が省かれ、ただ燕子花の花の群れのみが描かれていること、相違点としては八つ橋の橋の一部が描き足されていることだ。

この橋が描き足されていることで、画面には一種の緊張感が生まれている。この橋を光琳は最大限に様式的・意匠的に描くことで、その緊張感に独特の動きをもたせたかったように思われる。というもの、この橋は斜め上の視点から描かれているのに対して、燕子花のほうはほぼ真横からの視点で描かれており、視点の工作が独特の緊張感を生み出しているのである。

燕子花の花の描き方は、前作のそれよりも自然な感じに仕上がっている。その自然さが、画面に静謐さをもたらしているように見える。

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上の画面は左隻、これは右隻である。右隻の方は、橋と花とが切り離されて描かれており、橋の存在感がより強くなっている。

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これは、左隻の一部を拡大したもの。花びらの描き方に、自然な感じが現れているのがわかる。

(紙本金地着色 六曲一双 各179.0×371.5cm ニューヨーク、メトロポリタン美術館)






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