メジャーリーグ:アメリカン・ドリームを描く

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1989年のアメリカ映画「メジャーリーグ」は、ある種のアメリカン・ドリームを描いたものだ。夢の舞台となるのは、タイトルにあるとおりメジャーリーグだ。メジャーリーグはアメリカ最古のプロスポーツであり、しかもアメリカの国技とも言える野球の舞台なので、数々の夢を育んできた。この映画が描いた夢もその一つ、しかも正夢となった夢だ。

映画は、実在の球団を舞台としている。クリーブランドに本拠を置くインディアンズで、かつては火の玉速球で知られたボブ・フェラーを擁し、強力な時代もあったが、1954年以来優勝に見放されたばかりか万年最下位を争う弱小球団に成り下がっていた。その弱小球団が一念奮起して見事リーグ優勝に輝くさまをこの映画は描くのである。

この映画は正夢だったことが後に実証された。というのも、六年後の1995年に、インディアンズは実に40年以上ぶりにリーグ優勝を果たしたからだ。おそらくこの映画が励みになって、チーム一体となって奮励努力した甲斐があったのだと思う。

映画そのものは、非常に単純に出来ている。新しくオーナーになった女性が、チームをフロリダに移籍したいと考える。しかしそれには条件がある。観客動員が年間80満人を下回ったら、他市への移転を認めるという契約が、クリーブランド市と球団との間で交わされていたのだ。そこで新オーナーは、チームが連敗するよう取り計らう。そのために、ガラクタ同然の選手が集められ、ジェネラル・マネージャーもチームが負けることを求められる。それを聞かされた監督は大いに怒り、選手をたきつけて勝利への執念を植え付ける。その監督の意欲が選手たちにも乗り移り、まさかの快進撃を続けたあげく、ついに優勝するというわけだ。

映画に出て来るインディアンズの選手たちは、まさにガラクタ同然で、打っては凡打、守ってはエラー、投げては暴投と、いいところがない。それをヤンキース相手に戦える水準に高め、しかもそのヤンキースを破ってリーグ優勝を果たすというような、夢のような設定になっている。

チームが勝ち進むにつれて、地元の市民も熱くなる。かれらが一体となってチームを応援する様子は、甲子園でも見られないほどだ。なにしろ球場全体が鳴り響くような大音声で応援する。そのさまを見ていると、アメリカのプロ野球がいかに地域に根差しているかがよくわかる。なにしろアメリカの大都市は、だいたいがフランチャイズの球団を持っていて、町ぐるみで球団を応援するのだ。その応援のすがすがしさが、この映画から伝わって来る最大の魅力ではないか。





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