東坡帰院図:富岡鉄斎の世界

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富岡鉄斎は蘇東坡を敬愛し、折に触れて蘇東坡にまつわるエピソードを視覚的に表現した。「東坡帰院図」と題するこの作品は、鉄斎の東坡ものの傑作というべきもの。京都の和菓子屋虎屋の主人、黒川魁亭のために製作した。虎屋は鉄斎の家から近かったこともあって、よく出入りしていたそうだ。

蘇東坡(蘇軾)は、宋の時代の大詩人。王安石の新法派に対抗して旧法派の代表だったが、勢力争いに敗れて、投獄されたり海南島に流されたりした。ところが、真宗が死んで宣宗が立つと、旧法派は復活して、蘇東坡は都の翰林院に復職できた。それについては逸話がある。宣宗の祖母宣仁后が蘇東坡を呼んで、お前を復職させるのは実は死んだ真宗の意思だったというのだ。そのうえで彼女は、金蓮燭をさげ持たせ、蘇東坡を送ったという。

これは、蘇東坡が二人の童子を伴って翰林院に入る様子を描いたもの。童子たちは金蓮燭を捧げ持っている。なお、翰林院は、天子に直属して重要は詔勅を起草するところであり、政治的に重要な職務であった。

(1917年 絹本着色 134.0×32.6cmの一部 宝塚市、清荒神清澄寺)





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