ライフ・オブ・パイ:李安

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李安の2012年の映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(Life of Pi)」は、李安がハリウッドに招かれて作った作品。2001年に出版された冒険小説「パイの物語」の映画化権を獲得したフォックスが、李安にメガホンを取らせた。だからハリウッド映画といってよい。

難船した少年が、トラと一緒にライフボートで海上を漂い、227日にしてやっと救済されるという内容。少年はインド人で、事情があって家族総出でカナダに移住することになり、日本の船でカナダに向っているときに、嵐にあって船が沈没し、少年は命からがらライフボートに乗る。家族はみな死んでしまい、自分だけが生き延びたはいいが、ライフボートには、トラ、シマウマ、ハイエナ、オランウータンも乗り込んでいた。そのうちシマウマ以下はトラによって食われてしまい、ライフボートには少年とトラだけが残される。少年は、今度は自分が食われる番なので、なんとか智慧を絞って生き延びようとする。映画はそうした少年とトラとの壮絶なつきあいを描くのである。

少年の名はパイ。もともとピシンといったのだが、ピシンだと英語で尿を連想させるのでからかわれる。そこでピシンの頭文字をとってパイと名乗る。パイの両親はインドのある町で植物園兼動物園を経営している。しかし事情があって経営を続けられなくなり、一家は日本の船に乗ってカナダを目指す。ところがフィリピンを過ぎたところで台風に巻き込まれ、船は沈没、両親と兄は水死、自分だけがライフボートに乗って生き残る。そのライフボートに、まずシマウマが乗り込み、ついでオランウータン、ハイエナ、トラの順に乗り込んでくる。ハイエナがシマウマを食おうとするとオランウータンが追い払うが、ハイエナにはかなわない。しかしそのハイエナを含めてボート内の動物たちはみなトラに食われてしまう。つぎは自分が食われる番だと観念した少年は、魚をとって与え、トラの食欲を満足させてやる。

長い漂流のすえ、とある無人島に流れ着き、そこで一時の安らぎを得るが、その島は全体が食人島なのだった。ここにいては島に食われてしまうと考えた少年は、トラともどもボートに戻る。かくて再び海上を漂流しているうちに、再び嵐に見舞われて、メキシコの海岸に漂着する、というような内容だ。メキシコの海岸に下り立ったトラは、後を振り返ることなく、森の中に姿を消した。そのトラに向って少年は感謝の念をささげる。トラがいてくれたおかげで、生きることに目的ができ、その結果生き延びることが出来たと考えたのである。

映画は、そうした少年の冒険話を、ある作家が聞くという体裁をとっている。少年はその冒険のことを、日本人の保険調査員にも話したが、信用してもらえなかった。そこで動物ではなく人間三人と乗り込んだと言い換える。どっちが本当のことか、それは聞くものの判断にまかせるというのだ。作家は無論、少年が動物たちと一緒に漂流したのだと理解し、その理解に立って、少年の冒険を一冊の小説に書き上げたのであった。





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