ゴジラ:日本怪獣映画の原点

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1954年の映画「ゴジラ」は、いうまでもなく日本の怪獣映画のさきがけをなす記念すべき映画である。すさまじい人気を背景に、シリーズものとして続編が作られ続けたし、その後の日本の怪獣文化の原点となった。小生も小さな子どもの頃に、映画館の暗闇の中で、強大な怪物が暴れまわるさまに、心を躍らせたことを覚えている。

この映画は、いまでは純粋な娯楽映画として見られているが、公開された当時は、日本人の反核兵器感情を象徴するものと受け取られた。日本は唯一の被爆国として、広島・長崎で多くの人が犠牲になったほか、1954年3月には、アメリカが南洋のビキニ諸島で行った水爆実験のために漁船第五福竜丸が被爆するという事件が起きた。それに当時の日本人は強い憤りを覚えていたのだったが、その国民的な憤りが、この映画には込められていたのである。

この映画はまた、日本の特撮技術を飛躍的に向上させたといわれる。特撮といっても、巨大な怪獣が東京の市街を踏み潰したり、また飛行機が怪獣に攻撃を加えるシーンなどで、いまから見れば、たいした技術ではないが、当時としては斬新だった。この映画が起爆剤となって、その後の日本映画の特撮技術が高度になっていったことは認めてよい。

筋書きはいとも単純だ。南西諸島の海上に突然巨大な怪物が現われて、人々を驚かす。志村喬演じる科学者が、これは海中に眠っていたジュラ紀の恐竜が、水爆実験のショックで目覚めたのだろうと推測し、その怪獣を、地元の島の伝説に従って「ゴジラ」と名づける。

映画の後半は、そのゴジラが東京沿海部に出現し、銀座をはじめ都心部の市街地を蹂躙していくさまを描く。面白いのは、ゴジラの身長が50メートルとされていることだ。50メートルといえば、十四階建くらいのビルとほぼ同じ高さであり、現在の東京の市街地のなかなら埋没して見えないと思うのだが、当時の東京では、周囲を圧して巨大な印象に見える。なにしろ、戦後十年もたっておらず、東京タワーは無論、八階建以上の建物さえ珍しかった時代だ。街中に進出したゴジラは、実に大きく見えるわけである。

爬虫類の恐竜が海底で睡眠していたとか、小さな水槽の中の魚類を殺す程度の威力の物質が、東京湾という巨大な水溜りに浸かっているゴジラを一瞬のうちに融かしてしまうとか、荒唐無稽というべき設定は指摘できるが、そういう設定を笑い飛ばしながら楽しめる映画である。今の子どもたちが見ても、十分面白いのではないか。





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