朝鮮戦争の終戦宣言に岸田政権が難色を示す理由

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ワシントンで開かれた日米韓の高官協議の場で、韓国が朝鮮戦争の休戦宣言を望む意向を示したことに対して、日本側はこれに難色を示したそうだ。日本は朝鮮戦争の当事国ではなく、その休戦について正式に発言できる立場にはない。にもかかわらず、その休戦に対して異議を唱えるのはどういうわけか。

日本側は、北朝鮮の核開発問題や日本人拉致被害者問題をとりあげて、いまは北朝鮮に融和的な姿勢をとるべきではないと、終戦宣言反対の理由を述べたらしいが、拉致被害者問題は、朝鮮戦争とは何ら関係がないし、核開発の問題も、朝鮮戦争とは切り離して処理できることだ。だから、これらを理由に朝鮮戦争の終戦宣言に意義を唱えるのは、心得違いといわれても仕方がないだろう。

日本政府、つまり岸田政権の本音は、北朝鮮を孤立させたまま、日本との接点をなるべくなくしておくほうが都合がよいということではないか。北朝鮮との間で、国際的な融和ムードが高まると、日本はいやおうなく、過去の植民地清算を含めた、日朝間のいわゆる正常化に取り組まねばならない。これは非常に都合の悪いことだ。いま日本は韓国との間で、従軍慰安婦や徴用工問題をめぐって鋭い対立関係にある。日本側は、徴用工問題などは日韓間の条約で解決済みだという理由で韓国側の要求を突っぱね続けているが、北朝鮮との間ではそういう言い方はできない。ゼロベースでこの問題に取り組まねばならない。それは日韓関係にも大きなインパクトを与えるだろう。

というわけで、北朝鮮をめぐる融和ムードの醸成は、単に北朝鮮との間で過去の清算をせまられるだけではなく、韓国との間でも、面白くない事柄を蒸し返されることにつながる。だから、日本には、北朝鮮との間に融和ムードがすすむことには、なんらの利点もないのである。

だからといって、当事国でもない日本が、朝鮮戦争の終戦に意義を唱えることは、国際常識的にみてかなり異様なことであり、笑いものになりかねないことである。岸田政権はそのへんのところを十分覚悟しながら、スマートな外交に心がけるべきである。





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