米朝対話と日本

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今回米朝対話へ向けての機運が高まったことについて、トランプはこれを、米側による最大限の圧力に北朝鮮が屈した結果だと言っている。日本の安倍政権もその見方を共有し、日本を含めた国際社会が最大限の圧力をかけてきた成果が現れたもので、今後もその圧力を弱めるべきではないと主張している。

だがそれは単純な見方だ。北朝鮮が圧力によって体力を消耗しているのは間違いないにしても、それだけが今回の事態につながったと見るのはナイーブすぎる。北朝鮮がアメリカとの間で二国間の話し合いを持ち、アメリカから多くの譲歩を引き出したいと考えてきたことは周知の事実だ。その話し合いの機会がいまや熟した。そう考えて自分から積極的に仕掛けてきたと見るのがよいのではないか。

北朝鮮はいまや事実上の核保有国になっており、またそれをミサイルでアメリカに飛ばす能力も手に入れつつあると、当のアメリカも認めざるをえない状態に至っている。ということは、北朝鮮はいまや、アメリカとの関係で非対象的な弱者ではなく、対等とまでは言えないが、自分の言い分を幾分飲ませられるまでの実力を持っているということだ。その実力の自覚に立って、自分のほうからアメリカにボールを投げたというのが、実際のところだろう。

無論それにはさまざまな要因も働いている。一番大きかったのは、平昌オリンピックの機会を使って、韓国の文在寅が米朝間の橋渡しを行い、それにトランプが好意的に反応したことだ。仮に文在寅がいなかったら、今回の米朝対話の動きは起こらなかっただろう。

トランプというのは予測不可能な行動をする人間で、果たして米朝対話を実のあるものにできるのかどうか、はなはだ心もとないが、我々日本人にとって一番困るのは、トランプがアメリカの利益ばかりを考えて、日本など同盟国の都合を考えないということだ。その結果、アメリカを標的にしたICBMの開発は凍結するが、短距離ミサイルには言及せず、また核の保有もそのまま認めるといった内容の決断をトランプがすることだ。

そう決断されても、日本としてはなんら打つ手はないというのが現状だ。なにしろ安倍政権は、対話の為の対話は意味がないなどと言って、北朝鮮との対話外交を頭から否定してきた。そういう硬直した態度のツケが回ってきたというか、いまでは北朝鮮との間で話し合いのパイプが存在しない。それ故日本は、北朝鮮とか東アジアの平和と安定をめぐって、有効な働きかけをする余地が全くないに等しい。さすがに中国や韓国との間で融和ムードを演出するようになってきたが、まだまだバイプレーヤーの域を出ていない。とにかくトランプ頼みといった状態を脱し切れていないのだ。これでは一人前の国家とは言えない。





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