
渡辺綱は源頼光四天王の首座で、勇猛で知られる。さまざまな逸話があるが、最も有名なのは鬼退治の話。都の羅城門に鬼が出るというので、綱は頼光から授かった金札を立てるべく、羅城門に赴いた。すると鬼が現れて、背後から綱の兜をつかんだ。そこで綱はすかさず鬼の腕を切り落とし、それを持ち帰ったというもの。
この図柄は、頭上高く現われた鬼を、綱が見上げる場面。右手には金札を抱え持っている。鬼はまだ綱の兜に手をかけてはいないが、今にも襲いかかろうという勢いである。羅城門の柱の赤と、黄色い稲光が効果的。

これは鬼の部分を拡大したもの。鬼は羅城門の柱にしがみつきながら、綱のほうを睨んでいる。鬼の詰めは猛獣のそれを思わせる。
(明治二十一年<1888> 大判縦二枚続)
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