
竹に虎の組み合わせは、武家好みのモチーフとして、室町時代から多く描かれて来た。光琳のこの図は、小さな画面に虎の姿をいっぱいに描き、その周囲に竹を配したものであるが、虎の表情にはいかめしさと滑稽さとが同居していて、これだけを単独に描いても、絵にはならなかったと思う。周囲の竹があるおかげで、虎の大きさが引き立ち、虎らしい雰囲気が出ている。虎だけだったら、猫と区別はつかないだろう。
光琳はまず虎の躯体を薄墨でさらりと描いた上に、濃い墨で細部を描き加え、虎を描き終わった後で周囲の竹を描いたのだと思う。竹はそれぞれ墨の濃さに差異をつけることで、遠近を表わそうとしているようだが、左手から二番目の竹が最も濃く塗られているために、その遠近感がやや破綻して見える。
円熟した筆さばきからみて、かなり晩年に近い頃の作品と思われる。
(紙本墨画 28.0×38.7㎝ 京都国立博物館)
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