東ベルリンから来た女:クリスティアン・ペツォールト

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クリスエィアン・ペツォールトの2008年の映画「東ベルリンから来た女(Barbara)」は、ベルリンの壁が崩壊する以前のドイツを舞台にしている。日本語の題名からは、東ドイツから西ドイツへとやって来た女の物語かともとれるが、内容は東ドイツ国内でのことである。ベルリンから追放されて海岸沿いの小さな街にやってきた女性医師の物語なのである。日本語の題名はまぎらわしいが、原題では女主人公の名をとって、「バルバラ」となっている。

そのバルバラは、なにかの事情で公安当局の監視下にある。彼女の行動は逐次監視されていて、少しでも空白の時間があると、監視員たちによって尋問される。まさに「1984」の世界を思わせるが、実際この映画を作ったペツォールトは、ベルリンの壁崩壊以前の東ドイツを、ディストピアとして描きたかったのだろう。

バルバラは、小さな病院で外科医をやっている。そんな彼女に同僚の男性医師アンドレ・ライザーが思いを寄せる。しかし、彼女には恋人がいる。その恋人は彼女を西側に連れ出す計画を練っている。彼女はうっとうしい東ドイツを脱却して、西側の世界に行くことを願っているのだ。

バルバラはアンドレとチームを組んで、むつかしい患者の治療にあたっている。その中には少年矯正施設から抜け出して来た妊娠した少女とか、飛び降り自殺を図った少年などがいる。そうした患者を必死に監護する傍ら、恋人と逢瀬をたのしんでいるうちに、恋人がいよいよ、彼女を西側に脱出させる計画を実行しにかかる。夜間に、海岸からボートで脱出するというのだ。

その脱出の間際に、彼女は患者のむつかしい治療に直面したり、一度は施設につれもどされた少女が助けを求めに来たりする。結局彼女は、自分のかわりにその少女を脱出用のボートに乗せるのだ。

そんなわけでこの映画は、ある種のヒューマンドラマになっている。ただのヒューマンドラマなら、なにも東西対立をもちだすまでもない。東西対立を持ちだすならば、もうすこし別の展開もあったのではないかと、思わせられるが、まあ、これはこれで一つのやり方かなとも納得される。いずれにしても中途半端な印象はまぬがれない。






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