米朝物別れの陰にボルトンあり

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トランプと金正恩とのハノイでの会談には世界中が注目していたところだ。なにしろ金正恩は、三日間にわたる鉄道の旅を経てわざわざハノイ迄やってきたのだし、トランプも金正恩との間でディールを成立させることに熱心だった。ところが蓋を開けてみると、会談はあっさりと破綻し、物別れに終わった。共同会見もしないまま、金正恩とトランプは自分の国に向けて帰って行った。

この成り行きは、誰もが予想していなかっただけに、世界中に衝撃を走らせた。会談物別れの原因について、色々言われているが、決定的だったのは、この会談にトランプがボルトンを参加させたことだ。トランプと金正恩との駆け引きにボルトンが口を挟み、核兵器の即時全面廃棄とならんで、生物兵器など他の兵器についても廃棄することをせまった。それを聞いた金正恩が、そんなことをいうなら、アメリカも経済制裁の即時全面撤回をすべきだと、売り言葉に買い言葉の応酬になり、結果として会談が決裂したということらしい。

ボルトンは、もともとこの会談には否定的で、できればぶち壊したいと考えていたので、一応かれの目論見はあたったわけだ。この男は根っからのウォー・モンガーとして知られており、かつてイラク戦争を主導したほか、イラン核合意からの離脱を推進したり、北朝鮮に対しては先制攻撃を主張していたような人物だ。その人物が、北朝鮮にとって絶対呑めない条件を持ち出して、話し合いをぶち壊したというのが、おそらく真相なのだろう。北朝鮮側は、いまのところボルトンを非難してはいないが、自分たちのつつましい要求に対してアメリカが応じなかったといっている。

こんなわけで、今回の会談はボルトンを入れた時から破綻することが決まっていたわけだ。そこで問題は、トランプはなぜボルトンを加えたのかということになる。会談にはもともとボルトンが加わる予定はなく、ポンペイオのほかには、対北朝鮮大使として今回のお膳立てに苦労したビーガンが出るはずだったが、そのビーガンはテーブルの背後に追いやられ、本来かれが座るはずだった席にボルトンが座ったわけだ。ということは、この短い間にトランプが心変わりしたということだろう。

トランプの心変わりの原因は色々あるようだ。例のコーエンに絡むスキャンダルで、足元を揺さぶられ、対北朝鮮政策で妥協することがむつかしくなったという見方もある。真相はわからない。(写真はAFPから、画面左手にわずかに脚がのぞいているのがビーガン)





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