ルブリョフの聖三位一体:ロシア正教のイコン

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アンドレイ・ルブリョフの「聖三位一体」は、ロシアのイコン史上で決定的な役割を果たした。このイコンが現れて以降、類似した図柄のイコンが、ほとんど無数に作られたのである。

聖三位一体とは、父と子と精霊をさす。それがイコンに描かれるのはルブリョフ以前にさかのぼるが、それらの殆どは、アブラハムとその妻サラとが、三人の謎めいた客を迎えると言う「創世記」の場面をイメージ化したものだった。したがって、アブラハムとサラと並んで、三人のイメージが描かれていた。

ルブリョフはその伝統を覆して、アブラハムとサラを省き、三人の人物だけを取りだして描いた。そしてこの三人を、父と子と精霊のイメージだと主張したのである。これは画期的なことだった。だが、父と子と精霊を偶像化するものだとの指弾をうける恐れもあった。しかしそうした恐れを乗り越えて、このイコンは大きな敬愛を集めた。

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これは、中央のキリストのイメージを拡大したもの。かれの表情は、ほかの二人の表情とよく似ている。(トレチャコフ美術館)






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