伝名和長年像:長谷川等伯

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長谷川等伯は、若年期には多くの肖像画を描いた。伝名和長年像として伝わるこの肖像画はかれの若年期肖像画の代表作である。武将の直垂に名和氏の家門である帆掛船があしらわれていることから、名和長年の肖像だとされてきたが、異論もある。名和長年は、等伯にとってはすでに過去の人であり、等伯がわざわざ過去の人の肖像を描くとは考えにくいというのが、その理由だが、等伯は別に武田信玄の肖像画も描いており、信玄同様過去の人である名和長年を描いても不思議ではないという反論もある。

この武将は、上げ畳に坐して居住まいを正しており、いかにも武将らしい緊張感が伝わって来る。その武将の前には馬や人間が描かれているが、武将と比較してありえない構図であり、遊びのようなものを感じさせる。肖像画にこのような余計とも思える要素を加えるのは、武田信玄像の場合にも見られ、等伯の特徴と考えられる。

構図や彩色に大和絵の伝統、特に土佐派の影響が感じられる。左下に信春の朱印が押されている。(絹本着色 82.4×39.0㎝ 東京国立博物館 重文)





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