芙蓉竹の兎図:雪村の世界

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雪村の初期作品としては、いくつかの動物図がよく知られている。これはそのうちの一点。茶色の絹本地に、水墨と岩絵具で、兎、芙蓉、竹を精緻に描いている。水墨は輪郭を描くほか、影をつけるのにも使っている。その輪郭線の内部を、岩絵具で丁寧に塗っている。芙蓉の花の色は胡粉で表現している。

兎は竹と芙蓉の葉の陰に隠れて、何かを見つめているようである。兎の視線の前には空間がひろがり、それがかえって画面に変化を与えている。面白い構図である。

むっくりとした体つきがいかにも兎の量感を醸し出す。こうした兎の描き方は、実写にもとづくというより、明から伝わって来た院体画風の花鳥図などを参考にしたものと考えられる。雪村は、中国画の模倣から、絵の独学を始めたようである。

初期によく使ったという「雪村」の朱文方印が捺されている。もともとは、屏風に貼り付けられていたらしい。

(掛幅 絹本着色 30.8×39.4㎝)






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