ネタニヤフの対抗クーデタは成功するか

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ネタニヤフが収賄罪など三つの罪状で起訴された。これに対してネタニヤフは強い対抗心を見せている。イスラエルの法律では、首相を含め公職者は、起訴されたら職を辞任しなければならない決まりになっている。しかしネタニヤフには、そんな法律を守る気はないようだ。自分に対する起訴をクーデタだと決めつけ、起訴した連中を逆に起訴してやると息巻いている。クーデタに対する対抗(カウンター)クーデタを起してやるというわけだ。

こういうネタニヤフのやり方を、米誌ニューヨーカーの論説記事が批判している(Benjamin Netanyahu is indicted on criminal charges, and his defiance puts Israel's democracy at risk By Bernard Avishai)。ネタニヤフのやり方は、法の支配を揺るがすものであり、首相自らそういうことをすれば、イスラエルの民主主義を危機にさらすというような批判だ。

しかしイスラエルには、そもそも危機にさらされるような民主主義が存在するのか、疑わしい。イスラエルは、アラブ系市民を露骨に差別しており、また占領地のパレスチナ人に対して非人道的な振舞いをしている。そういう国家を、果たして民主主義国家といえるのかどうか。今回ネタニヤフが組閣できなかったことで、野党が組閣する努力をする光景が見られ、その中でアラブ系の政党を組閣に取り込もうとしたところ、ネタニヤフが先頭になって潰しにかかった。理由は、イスラエルはユダヤ人国家であり、アラブ人の政党を権力の一角に加えるのは許せないというものだった。要するに露骨な人種差別が、イスラエルではまかり通っているわけだ。

民主主義の危機は、トランプのアメリカについても危惧される、とこの記事は指摘している。そのトランプが、イスラエルの占領地へのユダヤ人植を支持したのは、ともに政治的危機にさらされている者同士の、連帯感からだろうとこの記事は皮肉っている。民主主義の危機という点では、アメリカのほうが事情はましだとこの記事は言っている。アメリカでは権力のバランスが保たれる制度が機能しており、トランプといえども、完全な独裁者にはなれない。それをトランプも思い知ったのだろう。最近は弱気な言動が目立つ。もしかしたら上院の共和党が寝返って、自分の罷免に賛成するかもしれぬと、本気で怖れているようだ。そんなトランプを、共和党の有力者たちはなだめ、もし弾劾されることになっても、二週間で裁判を終わらせ、あんたを無罪放免にしてやると言っているそうだが、それに同調しない共和党上院議員も、かなりいる様子なのだ。





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