バチ当たり修道院の最期:ペドロ・アルモドバル

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ペドロ・アルモドバルの1983年のスペイン映画「バチ当たり修道院の最期(Entre tinieblas)」は、スペイン版駆け込み寺を舞台にしたコメディタッチの作品。それにレズビアンの愛を絡めている。駆け込み寺といえば、日本では鎌倉の尼寺東慶寺が有名だが、そのような寺はおそらく世界中にあるのだろう。カトリック国であるスペインでは、尼僧の経営する修道院がその役割を担っているようだ。

映画に出て来る修道院には、院長を除けば、尼長以下五人の尼僧が住んでいる。彼女らの仕事は、祈りというより、保護を求めて来る女性の世話だ。彼女らは、お互いをあだ名で呼んでいる。ドブネズミ尼とか、堕落尼とか、肥溜め尼とか、毒蝮尼とかいったぐあいだ。尼長だけは肩書で呼ばれている。彼女は麻薬愛好者であり、かつレズビアンでもある。尼の中には、女流ポルノ作家とか虎を飼っている者もいる。この虎は、かつて保護を求めに来た女性が連れて来たのだが、その時にはまだ小さかったものが、出ていく時には大きくなって手にあまったので、修道院にそのまま置いていったのである。

その修道院に、麻薬中毒になった女が助けを求める。彼女は、恋人を麻薬中毒で亡くしたばかりか、よからぬ連中に追われてもいるようなのだ。そこで修道院に世話になることになった彼女は、尼たちから好意を持たれる。とくに尼長は彼女を大いに気に入り、自分の愛人にしたいと思う。だが彼女にはレズの趣味はない。彼女ともっとも親しくなるのは、ドブネズミ尼だが、その尼は密かにポルノ小説を書いている。その小説は、結構人気を博しているようなのだ。だが修道院の中にいては、なかなか材料となるような出来事にめぐまれない。そこで助けを求めてきた女性を観察して、それをもとにポルノ小説を構想しているというのだ。

この修道院は、パトロンだった金持ちが死んで以来財政難に陥っていた。そこで尼長は遺族に引き続き援助を求めるのだが、すげなく断られる。そこで昔世話をした女性に相談すると、麻薬の運び屋をやってくれと頼まれる。尼僧なら怪しまれずに、持ち運びができるというのである。策に窮した尼長は、それを受け入れることにする。

一方、修道院には新しい院長が派遣されてくる。その院長と尼長とは気が合わない。院長は尼長以下が堕落していると責めるのだ。そんな院長だが、皆が尼長の誕生日を祝って開いた宴会には参加する。その宴会に、保護されている歌手が歌と踊りを披露する。彼女はシースルーのドレスを着て、怪しい踊りを踊る。それを見て皆は拍手喝采する、というような筋書きで、他愛ないものではあるが、コメディタッチで軽快に展開していくので、なかなか楽しいところもある。

原題は「暗闇の間で」という意味だが、暗闇とは修道院の中をいうのだろう。邦題は、麻薬や同性愛に耽る尼僧たちの罰当たりぶりと、その修道院の存続危機の事態をあらわしたということか。






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