
「銀世界」と題したこの作品は、雪の中にうずくまる女を描いたもの。女が高下駄を履いたままうずくまっているのは、どういうつもりか。その表情からは、あまり明るい雰囲気は伝わってこない。顔はやや紅潮し、茫然とした表情をしている。なにやら思い詰めているようである。
女の衣装が鮮やかだ。コートのターコイズブルーと、襦袢の朱色とが強烈な補色となって、きわどいコントラストを放っている。それが銀色の背景から鮮やかに浮かびあがる。
髪や襟の部分は、墨をぼかし技法で施し、量感を出している。全体として華やかな印象の絵であるが、モデルが憂鬱そうな表情をしている分、その華やかさに怪しさが加わる。色気を感じさせる一点である。
(1933年 紙本着色 130.5×43.5㎝ 個人蔵)
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