コロナショックによる景気低迷対策に消費税減税は効果的か

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コロナショックによって日本経済に深刻な影響が出ており、今年度のGDPが大幅に減少することが確実視されている。そこで景気対策としての消費税減税が、野党はじめ各方面から提案されている。それに対して安倍政権は、いまのところ否定的だ。安倍晋三総理自身は、この消費税は福祉施策のための特定財源としての性格を強くもっていることを根拠として、その減税には消極的だ。また財政の自称専門家たちの多くも否定的だ。小生についていえば、期間限定での減税は、景気対策として効果的だと考える。ドイツやイギリスでは、日本の消費税に相当する税目を期間限定で減税している。日本も同じようなことができないわけではない。

消極論を代表していると思われる見解が、中央公論最新号にのっているので、それを紹介したい。経済学者土居丈朗氏の「『消費減税』で英独の真似はできない日本」という小文である。氏によれば、ドイツでは付加価値税の税率を今年7月日から12月まで期間限定で19パーセントから16パーセントに下げた。またイギリスは、今年7月15日から来年1月12日まで20パーセントから5パーセントに下げた。しかし両国とも、減税の効果が現れる可能性は非常に低く、したがって景気刺激の効果はないと予測している。そういうことで、日本でも消費減税は景気対策としては期待できないと言いたいようだ。

だが、日本と英独では、課税の仕組みも違うし、税が景気を刺激する仕方も違う。そのことは、氏みずから指摘していることだ。氏は、イギリスの付加価値税を取りあげて、それが内税方式であることを根拠にして、減税の効果が商品価格の下落にストレートにつながらず、かえってもとのままに据え置かれる場合のほうが多い。内税方式だから、そのようなことが可能だというのだ。内税方式なら、商品本体と税金との内訳を明示する必要はない。だから、売れる商品であれば、わざわざ価格を下げることもない。その結果、業者の懐がうるおうだけで、消費者は減税の恩恵を享受できず、その結果消費も伸びない、ということになる。

だから、日本でも消費減税は、景気対策としては期待できないと言いたいようなのだが、果たしてそうか。日本は、英独とは異なって、外税方式であり、本体価格と税金との関係はかなりオープンになっている。だから消費者は、税金について神経質なほどこだわる。過去何回か行われた消費増税のたびに、深刻な景気後退がおきたことがそれを裏付けしている。したがって、消費減税をすれば、商品価格が下がることはほぼ間違いないのだ。そういうわけだから、日本については、氏が懸念するような事態は起こらない。消費減税をすれば、消費は確実に刺激されるはずなのである。

氏はまた、減税したあと再び増税できるかどうか不透明だといっているが、その懸念は無用といってよい。氏は、過去の例からして、消費税をあげることには多大な困難を伴ったことを理由に、一旦減税すれば、元に戻す、つまり増税することには多大な困難を伴うのではないかと懸念しているのだが、時限立法という形での減税では、そのような懸念は無用といってよい。法律でそのように規定しておけば、別に多大な困難など生じることなく、もとの税率に戻せるはずなのだ。そんなわけだから、消費減税を期間限定で実施することには、巨大な障壁はないと考えてよい。安倍政権は、日頃から景気にこだわっていることを前面に押し出しているわけだから、この際、消費減税を時限的に実施することで、国難ともいえる今回の事態を乗り越えるべきではないのか。





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