イサクの生け贄を天使に止められるアブラハム:レンブラント

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レンブラントには、モチーフとなったものをなるべくドラマチックに描くという傾向が強くあった。この「イサクの生け贄を天使に止められるアブラハム」も、そうした傾向が強く現われている作品だ。これを見る者は、あたかも自分の眼前で実際に起きていることを目撃しているかのような錯覚を覚えるほどだ。

イサクの生け贄の話は、旧約聖書に出て来る有名な話で、キリスト教徒の画家たちが好んでモチーフにとりあげた。ミケランジェロのシスティナ礼拝堂天井画の中の、「イサクの燔祭」の絵柄がもっとも有名だが、レンブラントのこの絵も、ミケランジェロにひけをとらぬほど迫力がある。

旧約聖書には、アブラハムが神の命令に従ってイサクを生け贄にささげるべく、まさに息子をナイフで殺そうとした時に、天使の声がして思いとどまらせたと書かれているが、レンブラントはそれを誇張して、ドラマチックな雰囲気に描いた。

イサクの顔を手で押さえ、今まさにナイフを振り上げようとするところを、天使が現れてアブラハムがナイフを持った手を抑える。驚いたアブラハムはナイフを落とし、天使のほうを振り向いている。緊迫した様子が如実に伝わって来る作品である。なお、このモチーフの絵には、羊を描き添えるのが普通だが、この絵には羊は省かれている。あくまでも、アブラハムと天使とのやりとりに集中している。

(1635年 カンバスに油彩 193.5×132.8㎝ サンクト・ペテルブルグ エルミタージュ美術館)






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