学術会議任命拒否問題が世間を騒がす

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菅首相が学術会議の委員6人の任命を拒否した問題が、大きな騒ぎになっている。雑誌「世界」の最近号も、この問題を特集した。寄せられた意見はおおむね批判的で、中には菅政権の体質にファシズムの匂いを嗅ぎつけるものもあるが、小生がもっとも腑に落ちたのは、片山善博氏の見解だ。片山氏は、この問題を大袈裟には見ずに、単に菅政権の単純な手落ちとして見ている。

氏はまず、菅首相の説明能力の欠如あるいは説明責任に対する認識の著しい欠如を指摘している。その上で、菅首相の答弁は全く意味不明だと批判するわけだが、なぜそうなってしまうのか、その背景に目を向けているのだ。

これは氏の憶測だと思うのだが、菅政権はこの問題をそもそも内輪で処理しようとした。内輪というのは、官邸と学術会議の関係だという。通常、政府は意思決定にあたっては、利害関係者と事前の打ち合わせを行う。この問題についても、菅政権は学術会議を内輪の関係者と見て、事前に政府とすり合わせをしろと要請した。ところが学術会議がそれに従わず、政権の意向に反した推薦をしてきた。これはけしからぬことなので、今後の見せしめのために懲罰を与えねばならない。それが、6人の任命拒否につながった。拒否の基準は明確ではない。ただ、相手に懲罰だとわからせることができればよい。そういう考えで、今回の任命拒否が行われたのだろうと、氏は見るのである。

このように、今回の菅首相の行動は、自分にまつろわぬものに対する嫌がらせだったというわけである。であるから、なぜ6人かと聞かれても、その6人を拒否する具体的な理由を聞かれても、俄には答えられない。というのも菅政権は、この問題が表沙汰になるなどと予想していなかったからだ。こういうことは通常表沙汰になることはないのである。そこに菅首相の誤算が生じた。その誤算は、一つ目は学術会議が公然と反旗を翻したこと、もう一つは表沙汰になったことである。表沙汰になったのは、共産党の機関紙「赤旗」がすっぱぬいたためだが、ということは、普通ならほかのメディアは取り上げず、そのままうやむやになってしまう可能性が圧倒的に強かったのである。

氏は次のような言葉で文章を締めくくっている。「納得できる説明をと今さら求められても、もともと政権は説明責任意識が欠けている上に、こんな展開になることを予想していなかったので、気の利いた答えなど持ちあわせていない。さりとて、元に戻して105人全員を任命するのでは権威が失墜する。ここはほっかむりして『人の噂も七十五日』が過ぎるのをひたすら待つしかない」。要するに今回の事態は、菅首相の間抜けぶりが招いた自業自得だというわけである。小生もそれに同意見だ。





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