四州真景図:渡辺崋山の絵画世界

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(釜原)

渡辺崋山は、文政八年(1825)武蔵、下総、常陸、上総の各地に遊び、旅の風景などをスケッチした。「四州真景図」として今日に伝わっている。これは幅12~14センチの巻物に、墨で自在にスケッチし、それに淡彩を施したものだ。風景を見る崋山の視線がなかなか科学性のようなものを感じさせる。

この頃の崋山は、関東各地をよく歩き回った。四州真景図のほかにも、旅のスケッチ帖のようなものを残している。この頃は又、蘭学の講習を始めるなど、洋学にも関心を寄せるようになった。

上の絵は、下総の釜原を描いたもの。釜原とは、いまの千葉県釜ヶ谷のあたりの草原を指す名前。崋山は、三宅坂の田原藩邸を出立すると、中川を船で行って行徳にあがり、そこから木下街道を潮来方面に向かった。

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(潮来花柳)

徳川時代の潮来には関東有数といわれた遊廓町があった。利根川の水運が盛んになったことから、人の往来も繁くなったのだ。その利根川の水運は、佐原の商業的な繁栄をもたらす一方、潮来には遊廓を招きよせたというわけだろう。

右手に遊廓の大門が描かれている。このあたりの市街地はいまもあり、道路割もほとんど変わっていないが、遊廓の面影を感じさせるものはまったくない。

(文政八年 紙本墨画淡彩 縦12~14㎝巻物四巻 個人蔵 重文)







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