人新生とグローバル・コモンズ

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最近「人新生」という言葉を見かけるようになって、どんなことだろうと気にしていたところが、雑誌「世界」の最近号が、「人新生とグローバル・コモンズ」と題する特集を行った。何本かの小論文が寄せられており、それを読むと、人新生という概念の内容と、それとグローバル・コモンズとの関係がよくわかる。

「人新生(ヒトシンセイと呼ぶ)」という言葉は、大気科学者のパウル・クルッツェンが2000年に提唱したもので、地球の地質学的年代区分をさしている。いま我々人類が生きている地球は、約1万2千年前に始まった「完新生」と呼ばれるものだが、いまはその時代は終わって「人新生」と呼ぶべき時代に突入した。「人新生」とは、人類が地球環境に決定的な影響を及ぼし、その結果地球環境が危機に陥っているような状態を強調するための概念だということだ。その意味で、強い警告を含んだ概念である。

一方、「グローバル・コモンズ」という言葉は、文字通りには「地球全体の共通財」をさすが、具体的なイメージに翻訳すると「人類の共通資産」あるいは「人類共有の地球環境」ということになる。そのグローバル・コモンズを人類は管理する責任を負っている。そうした立場を、地球環境の管理責任者(スチュワード)と言うそうだ。要するに人類は地球環境の管理責任者として、持続可能な地球環境を維持・改善しない限り、地球で安全に生きつづけることはできないということである。

地球環境が破綻する境界をティッピング・ポイントという。それにはプラネタリー・バウンドと呼ばれるようないくつかの要因がある。とくに重要なのは地球の温暖化である。温暖化の影響は、すでに、北極海の氷の消失、珊瑚礁の大規模な死滅、南極の氷床の融解などにあらわれており、それらはもはや回復不能な状態に達しているという。地球環境の専門家の間では、今後10年間に適切な対応が地球規模でとられなければ、地球は確実に破滅に向って進むと予見されている。

そこで問題は、地球上の氷が解けると、最終的にはどのような事態が生じるかということだ。一層温暖化が進むのか、それとも寒冷化が起きるのか。従来の研究では、北極海やグリーンランドの氷の流出は深層海流となって、太陽光を反射させ、それによって地球表面の温度を高める効果を果たしていたが、氷が消失することで深層海流も消失すれば、太陽光線はさえぎるものなく海底に達し、その結果地球表面をあたためる効果が失われ、地球は寒冷化するだろうとされていた。それが違う結果の蓋然性のほうが高くなるのか。そのへんは、確定的なことは言えないようである。

ともあれ、この特集を読むと、地球環境が危機的状態にあるということが、わかりやすく伝わってくる。ほかでもない我々人類が、地球環境を破壊しているのである。





コメント(1)

多岐にわたる記事、興味深く拝見しております。
地球の終末は資本主義の終末に重なるのでしょうか。
新たな産業革命が興って地球も資本主義も延命するのでしょうか。
それとも資本主義に代わる経済社会システムがサステナブルな地球を実現するのでしょうか。
小生は喜寿に達しましたので結末を見ることは出来ません。
若い人の健闘と幸せを祈るばかりです。
ただ、グレタ・トゥンベリさんにはもう少し社会科学、自然科学を勉強してから頑張って欲しいと思います。

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