Y染色体が消滅しても人類は生き残る?

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先日(4月29日)のNHK特集「ヒューマニエンスSP人間を生んだ力とは?」を興味深く見た。哺乳類の胎盤形成にウィルスが決定的な役割を果たしたなど、人類発展の歴史的な過程が紹介される一方、マイナスの進化の中心テーマとして、Y染色体の減少傾向についても語られていた。Y染色体は、オスを生成するための決定要因なので、それの消滅はオスが消滅することを意味すると思われていた。そんなわけで小生なども、Y染色体の未来については大きな関心を抱いてきたところだ。

この番組は、Y染色体は、現時点での減少傾向を踏まえれば、おそらくあと数千万年後には生滅するだろうと予想されるという。しかしこれは突然変異などイレギュラーな事態が起こらないという前提のもとでの推測であり、そうしたイレギュラーな事態が起きて、いつなんどき消滅してもおかしくないそうだ。

もしY染色体が消滅したらどうなるのか。単純に考えれば、人類から男がいなくなり、女ばかりになる。それでは子孫も残せなくなり、人類全体が生き残れないだろうと考えるのは自然である。ところが、そのように考える必要はないと、この番組は言う。そうなった場合には、ある種の無性生殖のメカニズムが働いて、女だけで繁殖するようになるのではないかと言うのだ。

だいたい、男女の性別というのは、思われるほど単純なものではない。常識は男女の性別が厳然と区分けされていると思いがちだが、実際には、男女間の性差にはグラデーションがある。典型的な男性と典型的な女性を両極端として、その間には多くの変異が見られる。それをDNAレベルではX染色体とY染色体の組合せが担っている。その組み合わせのなかには、すでにY染色体を欠いたものもある。そういう組み合わせに応じて、男のような女とか、女のような男も一定数存在するようになっている。そういうわけで、性別というものは、今でも流動的なのだが、そうはいっても、Y染色体を欠いた個体が生殖能力をもつかどうかは確認されていないようだ。

いずれにしてもこの番組では、今までの傾向が今後も続けば、未来のある時点でY染色体が消滅すると断言していた。消滅の効果は今のところ明らかにはなっていないようだが、我々現在を生きている人間としては、未来のある時点でY染色体が消滅する可能性を危惧するよりも、愚かな人類が遠くない未来に地球を滅ぼしてしまう危険性を危惧した方が現実的なのではないか。この番組を見ながら、そんな事を考えた次第。






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