イスラエルの反ネタニアフ連合

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なかなか連立政権が結成できなかったネタニアフに代わって、反ネタニアフ連合が政権を担うことになった。この反ネタニアフ連合は、中道政党の「イェシュ・アティド」を中心にして八つの政党が加わったもので、その中には極右政党「ヤミナ」のほか、アラブ系の政党「ラーム」を含んでいる。要するにネタニアフ率いる「リクード」以外のすべての政党が反ネタニアフで一致したということだ。かくも異なった政党を結びつけたものはただ一つ、ネタニアフへの嫌悪だった。

ネタニアフは連続して12年間、全体で15年間もイスラエルの首相の座に居座り続けた。かれは絶対多数の基盤を持っていたわけではない。それでもこれまで長い間権力の座に君臨できたのは、徹底した分断政治の賜物だった。イスラエル内のあらゆる勢力を互いに反目させ、そのことで相対的に優位な立場を利用して、連立政権を維持してきた。その辺は、徹底した分断政治によって、比較的少数の支持基盤にかかわらず権力を維持できたトランプ政権と似ている。

今回の反ネタニアフ連合で最も注目すべきはアラブ系の政党が加わっていることだ。アラブ系は議員数では4人にすぎないが、連立政権の成立にとって決定的なキャスティング・ヴォートを握っている。したがって新たな連立政権は、イスラエル国内の人口の二割を占めるアラブ系国民の利害を尊重せざるを得ないと思われる。じっさい、連立の条件として、アラブ系の住民が多く暮らす地域への重点的投資など、アラブ系に配慮した政策が盛り込まれている。

この連立政権が、長い寿命を保ち、アラブ系国民の政治への統合が進めば、イスラエルは変わるかもしれない。しかし、この連立はネタニアフへの嫌悪を唯一の接着剤として成り立っているに過ぎない。今後どう変化していくかは、なかなか見通せないところだろう。いすれにしてもイスラエルが歴史的な転換を迎えているのは否定できないようだ。





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