竹林七賢図屏風:曽我蕭白の世界

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曽我蕭白は、明和元年(1764)に伊勢に旅し、そこで方々に寄宿しながら、様々な作品を生み出した。伊勢には蕭白の作品が非常に多く伝わっているので、一時期まで、蕭白伊勢出身説まで起こったほどだ。

蕭白は、伊勢明和町斎宮の旧家永島家のために、44面の襖絵を製作している。これほど大規模なコレクションは、珍しい。もっともそれら44面のうち12面は展覧会のために表装しなおされたり、また一部は大阪で保管されたりしたそうだ。

永島家に伝わってきた作品のうち、もっとも優れたものは「竹林七賢図屏風」である。西晋時代に実在したという有名な賢人たちをモチーフにした作品である。襖八面にわたる大画面に七人の賢人たちと、二人の従者が、墨で描かれている。それら人物たちは、巧みな工夫によって誘導される視線の先に配置されており、蕭白の構図構成力の非凡さを感じさせる。

上は右側四面。茅屋の中に五人の賢人が配置されている。阮籍、嵆康、向秀、劉伶、阮咸の五人である。かれらは去っていく山濤を見送っている。その山濤の視線の先には王戎が立っている。

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これは左側四面に描かれた王戎と従者たち。王戎は山濤と入れ替わりに、茅屋を目指しているようである。二人の従僕を連れているが、そのうちの一人は、竹に積もった雪を払っている。この竹は、茅屋背後の竹と呼応して、左右の画面に連続感を持たせている。

どの賢人の表情も、知的な雰囲気には見えない。どちらかというと愚かな顔つきに見える。そこは蕭白一流の茶化しの精神の表れなのだろう。

(1764年 紙本墨画 襖八面 各171.0×84.4cm 三重県立美術館 重文)







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