月下狸図:曽我蕭白の世界

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「月下狸図」は異様に細長い画面に描かれている。上部に月を配し、下部にその月を眺め上げる狸を配している。中間に挟まれた部分には、「てる月にうかれたぬきの はらうてばなおもかなでて あそぶかはほり」という狂歌が書かれている。

これは狸の部分を拡大したもの。月を見上げている狸は、口をあんぐりとあけ、左腕で腹をたたく仕草をしている。墨画のうち、口の中だけが赤く彩色されているので、ぎょっとした感じを見るものに起させる。このぎょっとさせるところをどう受け取るかで、蕭白への好悪が分かれるようだ。

ぎょっとさせるところがユニークだと積極的に評価するものもいれば、そこに不真面目さを見ていやになるものもいる。蕭白には、無頼派といわれるように、常軌を逸したところがあるが、この作品などその最たるものだろう。

なお狂歌にある「かはほり」とは蝙蝠のことで、これは月のすぐ下に、飛んでいる姿が描かれている。

(製作年不明 絹本墨画 117.7×14.4cm 個人蔵)






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