サピエンス減少:地球規模の人口減少

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雑誌「世界」の最近号(2021年8月号)が、「サピエンス減少」と題して、地球規模での人口減少について特集を組んでいる。それを読むと、地球規模での人口減少をマイナス・イメージで捉える見方と、プラス・イメージで捉える見方とに分裂している。

マイナス・イメージで捉える見方は、次のような議論になる。人口の減少によって、社会インフラや経済への深刻な影響が生じ、人類はいままでのような生存様式を続けることができなくなる。とくに、人口減少に加速度がつくと、方々で社会の崩壊が生じる。それを防ぐには、一定程度の人口増加努力が必要だ、というような議論である。

これに対して、プラス・イメージで捉える見方は、地球が持続可能なためには、自ずから人口の限界があり、いまやその限界を超えているので、人口が減るのはよいことだ。むしろ人口を適切に減らすよう努力すべきだ、というような議論になる。

マイナス・イメージで捉える場合、人口がこのまま無制限に増大することを容認するのではなく、急激な人口減少がおきないようにコントロールする必要があると言っているようである。その場合、どれくらいの人口までが容認されるのかが問題になるが、「縮減に向う世界人口」という論文は、100億人くらいはいいのではないかと考えているように伝わってくる。今の世界人口は約80億人なので、100億人になるにはそんなに長くはかからない。つい目の先のことだ。いずれにしても、地球の人口は今の状態の延長でいくと、すさまじい勢いで増加するのは目に見えている。そういう傾向を前提に、人口の減少を適切に食い止めるべきとするこの論文の趣旨に、小生などは非常に違和感がある。

プラス・イメージで捉える見方を代表するのは、「ゼロ成長と資本主義」という論文である。この論文は、いまでもすでに持続可能な人口をはるかに超えているという認識に立って、今後人口を減らす努力をしなければならないと主張する。その場合、持続可能な人口とはどれほどの水準かが問題となるが、この論文の筆者は、かなり低めに見積もっている。25億人まで減らしてもよいとまで言っている。25億人といえば、現在の地球人口の三分の一以下である。そんなにまで減らしていいのか、と小生などは考え込んでしまう。

持続可能な人口に向けて人口を減らせという意見も、人口の減少というトレンドを前提としてそれの適切なコントロールをすべきだという意見も、人口の増減のスピードが、非常にすさまじいものだという認識は共有しているようである。人口が増加するケースでは、「人口爆発」という言葉があるように、加速度的に増加する。一方、人口が減少に転じる場合にも、その減少の速度は加速度的に速まる。小生が小学生の頃に地球の人口は30億人と習ったものだが、半世紀後の今日、それは三倍以上の80億人までふくれあがっている。同じような加速度が、人口減少の場合にも生じる。今の時点で世界の人口が加速度的な減少を始めると仮定した場合、半世紀後の地球の人口は30億人に舞い戻ることになる。そんなに急速に人口が減少すれば、地球の住人は激しい変動に翻弄され、まともな生活ができなくなるとは、十分に言えそうである。





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