太公望図:曽我蕭白の世界

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曽我蕭白は太公望をモチーフにした作品を幾つか残している。太公望といえば、おっとりとした雰囲気が似合うのだが、この絵の中の太公望は、かなりユニークな印象を振りまいている。脚を組んだ姿勢で船の上に横たわり、釣りには関心がないようだ。だいたい、釣り糸は途中で切断され、用途を果たしていないのだ。

伝説中の太公望は、岸辺で釣糸を垂らしているところを、周の文王に見出され、文王の父親が待ち望んでいた賢人に違いないとして、太公望と名づけられた。要するに王が待ち望んだほどの賢人なのである。それ故太公望を画題とした作品には、だいたい賢人のイメージで描かれている。

ところがこの絵の中の太公望は、とても賢人のイメージではない。その表情こそ覇気を感じさせないでもないが、どちらかというと、捨鉢な印象である。このように、世間でもてはやされている人物のイメージを破壊して楽しむところはいかにも蕭白らしい。

(製作年不明 紙本墨画 128.9×54.1cm シアトル、ハクタクアン・コレクション)





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