ダンサー そして私たちは踊った

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2019年公開の映画「ダンサー そして私たちは踊った」は、グルジア系スウェーデン人レバン・アキンの作品である。一応、スウェーデン・グルジア・フランスの共同制作ということになっている。テーマは同性愛に目覚める若い男の心の揺らぎ。それにグルジアの民族舞踏とかグルジア的な人間関係のあり方を絡ませてある。

主題はあくまでも同性愛だが、この映画の主人公である若い男メラブは、子どもの頃からの性同一障害ではなく、大人になって始めて同性愛に目覚めるということになっている。はじめは、若い女性に性的な魅力を感じていたらしいのが、自分好みの男が現われると、俄然その男に性欲を抱いてしまう、というような内容の映画だ。

小生は、同性愛とか性同一障害に詳しいわけではないので、こういうケースが自然に起こりうるのかどうか適切な判断ができない。また、同性愛者に対して感情の部分で共鳴することもない。だから、この映画を見ても、ほとんどまともに受け止めることはむつかしい。男が別の男に性欲を感じるのは、理解できないことではないが、子どもの頃から、男性として自己認知していた男が、大人になって俄に同性愛者になるメカニズムには理解できないところがある。

同性愛に寛容なアメリカでも、いまだに偏見は根強いと言われている。いわんや、日本を含めたほかの先進諸国では、そうした偏見は社会の底辺までいき渡っている。近代化が進んでいない国ではもっとひどいと思ってよい。先日見た反カストロ映画「夜になるまえに」においては、「ゲイはクズだ」と叫ぶ男がクローズアップで映されていたが、グルジアも同じようなもので、同性愛者は厳しい差別にさらされる。そのため、主人公のパートナー役は、女性との結婚を選ぶ。ゲイのままでは生きていけないのだ。主人公のメナブもやはり、女性との結婚を選ぶのではないか、そんなことを感じさせながら映画は終わるのである。

この映画の見所は、グルジアの民族舞踏と伝統音楽にある。グルジアは、スターリンを生んだだけに誇り高い民族であり、自分たちの文化へのこだわりが強い。だから、時代遅れと言われながらも、伝統芸能に人生をかける若者も多い。この映画はそうした若者たちの、伝統芸能にささげる情熱を描いているわけで、その部分だけでも見る価値があるといえよう。





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