普陀落山観世音菩薩像:富岡鉄斎の世界

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普陀落山とは、観音菩薩が降臨する場所といわれる。華厳経の「入法海品」などに見える。海上にあるとも、南インドのマラヤ山の東にあるとも言われる。この絵の普陀落山は、海上の島をイメージしているのかもしれない。左下に水が描かれているからだ。

岩山を背にした観音菩薩が水に向って座している図だ。賛は、蘇軾の「応夢観音賛」からとったもの。次のような文面だ。「稽首觀音,宴坐寶石、忽忽夢中,應我空寂、觀音不來,我亦不往、水在盆中,月在天上」。水が盆中にあり、月が天上にあるように、観音はここ普陀落山にあるといっているのであろう。

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これは、観音像の部分を拡大したもの。全体を墨と白抜きで表現するなかで、観音の肌の部分だけに淡彩を施している。それが独特の効果をあらわし、観音が生き生きとして見える。なお、鉄斎はこのように白衣を着た観音像を若い頃から多数手がけている。これは最晩年の作品である。

(1924年 紙本墨画淡彩 90.3×32.8cm 宝塚市、清荒神清澄寺)





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