
「瀛洲僊境図」は鉄斎最晩年の作品。鉄斎は大正13年の12月31日に死んだのだが、この絵はその三日前に、主治医の浅木直之助に贈ったというから、鉄斎にとって文字通り絶筆というべきである。
瀛洲とは、蓬莱などと同じく東の海上にあるとされる神仙の島。鉄斎には他にも瀛洲をモチーフにした作品がいくつもあり、好みのテーマだったと思われる。
そそりたつ岩山の麓に、梅花に囲まれた屋舎があり、その一隅に老仙が静かに座している。巍巍たる岩山の描写といい、老仙のかもし出す雰囲気といい、九十歳近い年齢を感じさせない力作である。

これは屋舎の部分を拡大したもの。梅花に囲まれたかたちで、老仙が見える。おそらく長寿の泉からくみ上げた水を飲んでいるのであろう。
(1924年 紙本着色 142.6×40.2cm 宝塚市、清荒神清澄寺)
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