越前竹人形:吉村公三郎の映画

| コメント(0)
japan404.etizen.jpeg

吉村公三郎の1963年の映画「越前竹人形」は、水上勉の同名の小説を映画化した作品。愚かな男女の、愚かなりに一途な愛をテーマにした、切なさを感じさせる映画だ。越前の草深いへき地で竹細工を営んでいる男が、芦原(あわら)の芸者に恋心をいだく。その芸者は死んだ父親が生前かわいがっていた女だった。その女を竹細工師は家に迎えるが、妻としてではなく、母親代わりとしてだった。そんな夫に失望した女は、他の男に身をまかせる。その挙句に妊娠してしまい、それに罪悪感を覚えた女は、堕胎に失敗して自らも死んでしまう、というような内容だ。

越前の山の中の自然や、芦原の遊郭街が情緒たっぷりに映しだされ、それを舞台に男女の絡み合いが描かれる。若尾文子の演技が光っている。とにかくこの映画の中の若尾文子の存在感は圧倒的で、彼女の一人芝居といってよいほどである。若尾文子が好きな人にとって、これは絶体に見逃せない映画だろう。

越前の竹人形は、竹細工師が余技として作ったもので、ほとんど無名だったように描かれているが、近年では越前名物として広く知られるようになったようだ。そのことに、この映画も多少は貢献しているのだろう。






コメントする

アーカイブ