ミット・ロムニーの真実

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 8月29日にフロリダ州タンパで開催された米共和党大会において、ミット・ロムニーが大統領候補に指名された。そのロムニーの政策だが、これがきわどい内容のもので、保守反動路線の極みと言ってよい。最近保守色を強めている共和党にあっても、過去に例を見ないような保守反動ぶりだ。

こんな風にいって、ロムニーの政策を批判しているのは、最近号の英紙Economist だ。So, Mitt, what do you really believe? Too much about the Republican candidate for the presidency is far too mysterious

まずイデオロギーが絡んだ政策について。堕胎禁止を求める人々に配慮し、最高裁の判事には堕胎反対派の法律家を指名するといったこと、同性愛の普及を阻止するために、婚姻を男女間に限定する連邦婚姻法を支持したこと、また、レープされた女性が妊娠することはないという奇妙な意見を支持したことなど、ロムニーの保守反動ぶりはあからさまなものだ。

内政面では、小さな政府論を正面に掲げ、減税と歳出カットを打ち出している。一方では所得税の課税最低限を現行の35パーセントから28パーセントに下げ、他方では国防予算を飛躍的に増やすと言っている。これは、オバマケアといわれるような社会保障予算をすべてカットしなければ、とても実現しないだろう。

外交面では、強いアメリカの復活を強調しているが、具体的には中国とアラブ諸国を敵視する一方、イスラエルに肩入れする姿勢を強めている。世界の緊張をあえて高めながら、アメリカの覇権を追求しようとする姿勢だ。

こんなロムニーだが、マサチューセッツ州知事時代には、これとは全く反対のことをやっていた。

堕胎、銃規制、地球温暖化問題といった課題に取り組み、医療保険制度を確立させたという点ではオバマの先駆者といわれるほどだった。つまり共和党には珍しく、リベラルな政策を展開していたわけだ。

そんなロムニーが一転して保守反動路線に走ったわけは、熾烈な予備選を潜り抜けてきたせいだろうと、エコノミストの記事も同情している。ティーパーティに代表されるようなウルトラ右翼運動が共和党に強い影響を及ぼし、彼らの支持を獲得することが求められる中で、ロムニーも従来の主張を捨てて、あえて右傾化を装ったのだろう、そういうわけだ。

しかし、ひとりの人間として、ここまで主張を変えることができるのか。いくらなんでもひどすぎる、というのがエコノミスト記事の言い分だ。(写真はAFPから)

 





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