総裁の顔:自民党の谷垣外し

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会期末まで時間を残して休眠状態に入った政局で、話題はもっぱら自民・民主両党の総裁選に移った。そんななかで、自民党の谷垣総裁が再選に向けて意欲を示しているものの、再選は難しいとの憶測が強まっている。これまで谷垣氏の再選に理解を示していた派閥の長老たちが、谷垣では選挙は戦えないとして、谷垣外しに走っているせいだ。昨日は、谷垣氏が属する派閥のボス古賀氏までが、谷垣氏への協力を拒んだ。

こんな光景を見せられて、過去の遺物になったはずの派閥がまだ生きていたかと、妙な関心をした人は多いだろう。小泉政権のもとで派閥は影響力を劇的に低下させ、そのかわりに党の執行部が勢力を強めてきた。小泉は独特のパフォーマンスを駆使しながらも、執行部の権力を背景に、派閥の力を徹底的に抑え込んだものだ。そうした流れは谷垣体制においても止まっていなかったはずだと、筆者などは思っていたものだが、実際はそうではなかった。派閥の長老たちは、手を結び合うことで、現職の総裁を椅子から引きずりおろすほどの力を温存させていたということだ。

何故こんなことが起きているのか。まず、谷垣氏の権力基盤の弱さがあるだろう。小泉は、党内での権力基盤の弱さを補うために直接国民に呼びかけてその支持を獲得し、それを最大限に活用することで一般党員の支持を手繰り寄せ、派閥の力学を粉砕して勝利をもぎ取った。彼は派閥にかわる権力基盤を自分の手で調達することで、総裁として君臨し続けることができた。

ところが谷垣氏には、派閥の力学を圧倒するほどのカリスマ性がない。カリスマ性に欠けるから国民の人気も盛り上がらない。国民の人気が盛り上がらないから派閥のボスたちから馬鹿にされる。あげくは、谷垣では役不足だから、次の選挙の顔になれるような、カリスマ性のある人物を総裁に据えたい、こんな思惑が独り歩きするわけだ。

とはいっても、谷垣氏には制度上総裁に付与されている強大な権力があるはずだ。たとえば人事権や政策形成へのイニシャティブなど、リーダーシップの資源となるものは、かつての派閥均衡時代に比べ、総裁への権力集中が進んでいる。小泉があれほど成功したのは、自らのカリスマ性のほかに、こうした制度上の権力を最大限活用した結果なのだ。だから谷垣氏だって、こうした権力を最大限活用することで、派閥の力学を突破できないということはないだろう。にもかかわらず、古賀会長からコケにされて自嘲気味な表情を見せるばかりなのは、ほかならぬ自分に対して信頼を持てないからか。

谷垣氏がこのまま引き下がってしまうようでは、まともな政治家とは評価されないだろう。

一方民主党の方も、野田さんでは次の選挙は戦えないと、野田降ろしの動きがあるようだ。まあ野田さんは谷垣さんほどお人よしではなさそうだから、自分を蹴落とそうとする動きには徹底的に対抗するだろう。野田さんを総裁の座から引きずりおろすのは並大抵のことではないだろう。

それにしても、谷垣外しといい、野田の蹴落しといい、つまらぬ権力闘争という印象ばかりが強い。そこには日本の国をどうするかとか、国民生活をどう立て直すとかについての、政策上のやり取りは殆ど見えない。あいつは気に入らぬから応援しない、そういった幼稚な感情が透けて見えるばかりだ。きちんとした政策を掲げて、正面から戦って欲しいものだ。

 

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