ライアンは大ウソつき?

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前ニューヨーク州知事のエリオット・スピッツァーが、米共和党の副大統領候補ポール・ライアンを大ウソつきだと罵ったうえで、それにも拘わらず国民から多くの支持を集めていることについて、ニューズウィークWEB版に投稿した文章の中で大いに嘆いて見せた。

"ライアンは、ゼネラル・モーターズ(GM)の経営破綻をオバマ大統領のせいにするが、実際はブッシュ前政権時代に既にほとんどの工場が閉鎖され、大量の失業者が出ていた。また、メディケア(高齢者医療保険)の予算カットを批判しているが、これもライアン自身が下院予算委員長としてまとめた予算だ。こうしたあらゆる問題をめぐる彼の歪曲ぶりは誰が見ても明らかで、めちゃくちゃだ。"

スピッツァーはこういった上で、にもかかわらず、ロムニー&ライアンを支持する人々に対して、「その話は間違っている」と説得することが困難なことを嘆いている。選挙戦にとって大事なのは「真実」や「理性」ではなく、「信念」や「感情」だからだ、というわけだろう。だから、普通なら誰しもおかしいと思うに違いない次のようなことも、選挙を戦ううえでの作戦とみれば、少しも不思議ではないことになる。

"ライアンは、アメリカ国債の格付けが下がりそうだと嘆く。ただしそれは彼ら共和党が、連邦政府の債務上限の引き上げに反対を続けているせいだ。保守派市民運動ティーパーティーの高齢者たちが、オバマケア(公的医療保険)には不当な政府介入として猛反対しながら、高齢者向けの公的医療制度については「私のメディケアに手を出すな!」と金切り声をあげるのと同じだ。しかしこの偽善ぶりはこの先変わらないだろう。私たちも、変わると期待するのはやめるべきだ"

スピッツァーは、一時期は民主党のプリンスなどと呼ばれたこともあるが、不名誉なセックス・スキャンダルを暴かれて政治生命を絶たれた。そんなことから、今では誰からも信用して貰えない。それ故、ニューズウィークへのこの投稿についても、気にかける人は、民主党支持者の中にも、見当たらないかもしれない。

そこで、もう少しフリーな立場から、ライアンの偽善者ぶりを紹介したものがないか探したところ、それがみつかった。雑誌ニュー・ヨーカーの専属記者ライアン・リッザの最近の記事だ。The Paul Ryan Speech: Five Hypocrisies

リッザは、ロムニー&ライアン・コンビを指名した共和党大会でのライアンの演説を取り上げ、その中に五つの欺瞞があると指摘している。

一つ目は、オバマがGMを破綻させたというものだ。これはスピッツァーが言っている事と同じ内容のもので、リッザもスピッツァー同様、GMはオバマが大統領になった時点ですでに破綻していたと指摘する。

第二は、オバマの景気刺激策への攻撃だ。オバマは景気刺激策と称して史上最大規模の予算を使ったが、それらはすべて無駄遣いされたのであって、景気には何の効果もなかった、とライアンは言っているが、政府の予算獲得に最も熱心だったのは、実はライアンだったのだと皮肉っている。

第三は、オバマがメディケア予算を7000億ドルも削減したことへの攻撃だ。オバマケアを最も強く非難している当のライアンが、オバマがメディケア予算を削ったといって批判するのは筋違いだろうというわけだ。

第四は、オバマが口先だけで、中身が伴っていないと攻撃していることだ。このことについては、リッザは2005年に自分が行ったライアンへのインタビューの一端を紹介している。当時ライアンは社会保障改革を叫んでいたが、与党の実力者としてやれることを、なかなかやろうとしなかった。その点をリッザが指摘したところ、ライアンはのらりくらりとして答えなかった。

第五は、政府債務を検討したシンプソン・ボウルズ委員会の勧告について、オバマがそれを無視したと攻撃したことだ。ところで、この委員会の共和党側代表はライアンが務めており、彼は問題の勧告なるものについて、反対を表明していた。だからそれが守られなかったといって、不平を唱えるような立場ではないというわけだ。

こんな具合で、どうもライアンは言うことはいい加減で、しかも言うことと為すこととがさらさらマッチすることがない、どこを信用したらいいのか全く判断に苦しむ、ということらしい。(写真はNew Yorker から)





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