右傾化する日本?

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尖閣問題を巡っての日中対立について、アメリカのメディアはこれまで大きくは取り上げてこなかった。アメリカにとっては、アラブ圏で起きている反米運動や大使殺害といった事件の方がずっとショッキングで重要な問題であったというのがひとつ、もうひとつは、日中対立にかかわる中国側の意図がなかなかわからなかったということがあったらしい。権力の交代を前にした中国の情勢について、下手な論評をして悪い影響力を行使することは慎もう、という配慮が働いていた可能性がある。

ところが、ここにきてニューヨークタイムズとワシントンポストがこの問題を詳しく取り上げた。ニューヨークタイムズの方は、日中双方とも政治の季節を迎え、国民に対して領土問題で妥協できない事情が対立を深めさせていると、第三者的な論評をしているが、ワシントンポストの方は、「右傾化する日本」と題して、日本国内における右傾化の傾向が尖閣問題をややこしくさせている要因ではないかと推測している。

ワシントンポストの記事(With China's rise, Japan shifts to the right By Chico Harlan)は、日本の野田首相を右翼的政治家と決めつけ、力で領土問題を解決しようとする危険な人物だという趣旨のことをいっている。そして、野田氏の後を自民党の政治家が引き継いだら、日本の右傾化はもっと強まるだろうと懸念している。

アメリカの有力メディアがやっと尖閣問題を大きくとりあげたことの背景には、もしかしたら日中間に武力衝突が発生するかもしれないとの危惧があるのだろう。そうなればアメリカはいやおうなしに巻き込まれる。アメリカは日本との間に軍事同盟を結んでおり、尖閣は当然条約の適用対象となるからだ。

中国は、尖閣防衛のためには武力の行使を辞さないと重ねて明言してきており、それに対して日本の野田政権も、あたかも武力を以て受けてたつような反応を返してきた。売り言葉に買い言葉の典型的なパターンだ。双方とも頭に血が上ってまともな判断ができなくなっている可能性が強い。これではいつ日中間に火花が散ってもおかしくない。それは非常に迷惑で困った事態だ。アメリカの良識ある新聞はどうもそう考えているようなのである。

この記事と前後して、中国の次期最高指導者に擬されている習近平氏が、領土問題は武力を通じてではなく、平和的に解決したいとのメッセージを出した。これには、尖閣が日米同盟の対象であるとするアメリカへの目配りもあると思うが、いずれにせよ、習近平氏が本心からそう考え、中国国民にもそれを説明して平和的な解決の大切さを訴えるなら、この問題が泥沼に陥るのを防げるかもしれない。

日本の指導者たちにも、頭をカッカさせ、尻から煙を出すようなまねはやめ、もっと冷静に考えて、紳士的に振る舞って欲しいものだ。


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