安楽死と自殺ほう助

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昨年の6月に死んだケヴォーキアンを取り上げた当ブログ記事の中で、安楽死と自殺ほう助を巡る世論はまだ非常に厳しいものがあるとコメントしたが、最近になって多少の動きが出てきたようだ。その動きをエコノミストの記事が拾っている。Over my dead body Helping the terminally ill to die, once taboo, is gaining acceptance Economist

アメリカでは、これまでオレゴンとワイオミングの二州が医師による自殺ほう助を一定の条件のもとで合法化していたが、来月はそれにマサチュセッツ州が加わりそうだという。マサチュセッツ州の法案は、余命6か月と診断された患者について、医師のほう助を得て自殺することができるというものだ。

ヨーロッパ諸国では、スイスがすでに1942年に安楽死を容認していたが、現在はそれに加え、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグの三国が安楽死を合法化している。

このほか、安楽死の合法化に向けて議論が進んでいる国として、イギリス、ニュージーランドがあり、またカナダのケベック州、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州でも合法化の議論が進んでいるという。これらの国や州では遠からず安楽死が認められる可能性が強い。 

1994年にケヴォーキアン医師が自殺ほう助で訴追され時には、それが合法的であったのはスイスだけだったわけだから、隔世の感と言わねばなるまい。

安楽死を合法化する動きの背景には二つの事情が働いていると当該記事は言う。ひとつは患者の人間としての尊厳性への配慮だ。死を目前にして苦痛にさいなまれ、人間の尊厳も保てない患者について、尊厳死としての安楽死を認めてもよいのではないかとする考え方が強まっていることだ。

もう一つは、コスト面の考慮だ。いたずらな延命措置は患者自身にも多大な経済的負担をもたらすし、社会全体のコストもばかにならない。そういった現実的な考え方が次第に同意を集めているということだ。

しかし、安楽死には全く問題がないわけではない。事実、安楽死を希望した患者が、死後自分の臓器の移植を容認していたというケースを巡って、様々な議論が起きた。それらをきっかけにして、安楽死を認める際のセーフガード基準も設けられてきている。

たとえばオレゴン州では、患者には精神的な欠陥がなく正常な判断ができる状態にある事、患者の苦痛が非常に大きなものであり、余命も6か月以内であると診断されている事、患者にはホスピスへの移動やペインクリニックについて十分な説明が行われている事、また、患者には複数の医師が接して、それぞれ患者の意思を確認していることなどである。

実際に自殺ほう助によって死んだ人の割合が気になるが、そんなに大きなものではないらしい。最も長い実績を誇るスイスでも、全体の死者数のうち0.5パーセントにすぎないという。オレゴン州では0.2パーセント、一番多いベルギーでも1パーセント未満だという。


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