釵頭鳳:陸游を読む

| コメント(0)
陸游は20歳の頃結婚した。相手は母親唐氏の姪で、唐婉といった。二人は非常に睦まじく愛し合ったが、そのことが母親の嫉妬をかったのかもしれない。唐婉は母親によって追い出されてしまったのである。

陸游はその後、王氏の娘と結婚するが、唐婉のことは一生忘れることがなかった。というのも、陸游は80歳を超えてまでも、折に触れて唐婉を思い出し、彼女を思う詩を作っているのである。

唐婉と別れてから10年ほどたったある日、陸游は紹興の東南にあった沈氏の庭園を訪ね、そこで思いがけず唐婉と出会った。陸游はあまりの懐かしさから、一篇の詞を作った。

釵頭鳳

  紅酥手 黃藤酒   紅酥の手 黃藤の酒
  滿城春色宮牆柳  滿城の春色 宮牆の柳
  東風惡 歡情薄   東風は惡しく 歡情は薄し
  一懐愁緒       一懐の愁緒
  幾年離索       幾年か離索せし
  錯錯錯         錯(あやま)てり錯てり錯てり

  春如舊 人空瘦   春は舊の如く 人は空しく瘦せ
  淚痕紅浥蛟綃透  淚痕は紅に浥(うるほ)ひて蛟綃透る
  桃花落 閑池閣   桃花落ち 池閣閑かなり
  山盟雖在       山盟は在りと雖も
  錦書難託       錦書託し難し
  莫莫莫         莫(さび)し莫し莫し

桜色をしたあなたの手が、黃藤の酒を汲んでいますね、町は春の盛り、塀際の柳が青い、春風は意地悪で、二人の愛ははかない、胸は愁いにつぶれ、何年が過ぎたでしょう、ああ、私たちは間違っていました(黃藤は酒の名前、離索は離れて暮らすこと)

春は昔のままなのに、人はむなしく痩せていく、涙の跡が赤く染まり薄絹のハンカチをすかして見える、桃の花は散って、池の建物が静かにたたずんでいます、固い誓いはいまでも忘れませんが、手紙でお伝えする伝手がないのです、ああ、さびしい(蛟綃は薄絹のハンカチ、山盟は堅い誓い)


釵頭鳳とは詞の形式での一つである。それには曲がついており、その曲に合わせて歌詞を歌うことになっていた。

なお、この再会の時、唐婉は他家に嫁いでいたが、再会後間もなくして亡くなったという。


関連サイト:漢詩と中国文化 





コメントする

アーカイブ