中国の権力移行

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中国共産党の大会が閉幕し、次の10年の国家運営を担う新しいメンバーが確定した。この10年ぶりの権力移行は、いまや世界第二の経済大国になった中国の今後の動向を占うものとして、当然ながら、世界中の注目を集めた。筆者も注目していた一人だが、この超大国の権力移行が、相変わらず闇の中で行われた、その奇怪さに改めて感じ入ったところだ。

まず銘記しなければならぬのは、この権力移行劇が、中国共産党という一政党の内部で行われたということだ。中国の憲法上は、国家と共産党組織とは一体のものと規定しているが、共産党は国民に直接責任を負っているわけではない。今回の大会に集まった党員は、国民によって直接選挙されたわけでもないし、したがって国民の意思を代表しているとはいえない。そういう立場の人間が、どうして国民に対して責任を持ち、国民のために政治を行うと保証できるのか。

そうした人間たちが集まって大会を開き、今後の国家運営についての方針を定め、国家の指導に当たるメンバーを決めるわけだが、方針の設定についても、メンバーの選出についても、それらが誰によって、どのように行われたか、については闇の中だ。漏れ伝わってくるところによれば、過去の指導者たちも加わり、熾烈な勢力争いが行われたということだが、その争いには、国民の声は一切反映されていない。

大統領の選出に国民全体がかかわるアメリカとは、極端な対称ぶりだ。両国の権力交代劇がほぼ並行して行われただけに、その大きな相違が人の目を驚かすわけである。

ともあれ、習近平を中心にした7人のメンバーが確定した。事情通によれば、予想以上に保守的な組み合わせということらしい。だが、習近平を含めて、彼等がどのような政策をとるだろうかについては、今の所予断できないということらしい。

ただ、胡錦濤時代に比べれば、保守的で内向きの政策をとるだろうと推測されている。習近平の就任演説の中で、ナショナリズムを思わせるフレーズが多かった一方、胡錦濤がよく用いていた、改革や解放といった言葉が見当たらなかったことから、そうした推測が可能だというわけである。

一方、大きな問題になっている腐敗や汚職、過度の形式主義や官僚制の弊害などを克服し、人民に密着した政治を強調せざるを得なかったことは、いまや中国共産党と雖も、国民から浮き上がっては生き残れないことを、新指導部も十分に認識していることを物語っている。だからといって、この指導部が、民主主義の拡大や対外開放にどこまで真剣に取り組むかについては、明らかには見えない。

対日政策については、悪化していた関係が、一気によくなる可能性は期待できないようだ。というのも、尖閣問題を巡る対日対応について、習近平が実質的な責任者としてすでにかじ取りをしていた事実が指摘されているからだ。実際、習近平は日本政府の尖閣国有化を、茶番劇だといって激しく非難していた。

ともあれ、中国の新しい指導部の動きについては、当分の間、慎重に見守る必要があるようだ。(写真はCNNから)


関連サイト:中国を語る 





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