ガザの停戦

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ガザを舞台にして戦闘を続けていたイスラエルとハマスとが、停戦で合意した。一時はイスラエルによる大規模な地上戦まで予想され、1400人の死者を出した2008年の武力衝突以来の惨劇が憂慮されたが、とりあえず最悪の事態は避けられることになったわけだ。しかし、油断はできない。イスラエルとハマスとの対立構造は、基本的に解消されたわけではないし、また、今回の停戦にむけた合意のプロセスにも、不安定さを感じさせる要因があるからだ。

今回の停戦を主導したのは、エジプトのモルシ政権だった。モルシはイスラエルとの間の和平条約を人質にとって、ネタニヤフ政権に妥協を迫った。これに対してイスラエルは、国際的に孤立するリスクを考えて、妥協に応じたということだろう。この交渉のプロセスの中で、アメリカは殆ど何もなすところがなかった。いち早く、イスラエルの行動を自衛のためのものだとして、イスラエル寄りの姿勢を露骨に見せていたので、調停者としての資格を疑われたわけである。しかし、日頃オバマとは仲の悪いネタニヤフとしては、アメリカの支持を取り付けたことは、成功だったにちがいない。そのアメリカの面子をつぶさないためにも、ここいらで妥協しようと、ネタニヤフは考えたのだろう。

モルシは、ハマスに対しては連帯を表明することで、交渉の場に引き出した。ムバラクなら到底考え及ばなかっただろうことだ。モルシは、首相をガザに派遣するだけでなく、アラブ連盟などを通じて、周辺国のハマスへの連帯まで表明させた。こうした努力がハマスを軟化させ、停戦に合意させたと推測される。

しかし、そもそもハマスをイスラエル攻撃に駆り立てた要因は、何ら解消されていない。その最たるものは、完璧な経済封鎖だ。この経済封鎖によって、ガザ市民は国際社会から隔絶され、そのことがガザ市民の中の反イスラエル感情を強化させたという構造がみえるのだが、それは全く変わっていない。

また、イスラエルはヨルダン川西岸への入植の動きをやめようとはしていないし、アッバスとの交渉にも熱心でないばかりか、西岸を併呑しようする意図まで仄めかしている。そのアッバスは、今回の事態に関しては、殆ど影響力を発揮できなかった。その一方で、アメリカとイスラエルがテロリストだとしわけだ。

こうした状況を踏まえると、中東和平を巡って新しい状況が生まれてきていることを、強く感じさせる。(写真はWPから)





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