映画史上最高の傑作はヒッチコックの「めまい」:イギリス映画協会

| コメント(0)

121113.hitchcock.jpg

イギリス映画協会は、世界の映画史上最高の傑作を10年ごとに選んで発表している。これまでは、オースン・ウェルズが1941年に作った映画「市民ケーン(Citizen Kane)」が、数十年間にわたって、映画史上最高の傑作だとされてきた。ところが、今年異変が起きた。アルフレッド・ヒッチコックが1958年に作った恐怖映画「めまい(Vertigo)」が、「市民ケーン」を押しのけて、堂々一位になったというのだ。

ヒッチコックといえば、「サイコ(Psycho)」や「鳥(The Birds)」などで、日本人にも馴染みある映画監督だ。彼の作った映画は、さまざまな反響を呼んだが、その割に高く評価されることはなかった。「めまい」は、ニューヨークタイムズの「1958年のベストテン」に選ばれることがなかったし、ヒッチコックは一度もアカデミー監督賞をとったことがなかったのである。

そのヒッチコックの、しかも代表作とは見なされてこなかった映画が、一躍世界映画史上最高傑作に選ばれたのは、どういうわけか。

最近、ヒッチコックの映画作りへの情熱をテーマにした映画(その名も「ヒッチコック」)が、アンソニー・ホプキンスを主役にして作られたが(11月下旬からロードショー)、この映画がきっかけになって、映画人の間でヒッチコックの再評価が一気に進んだようなのだ。その結果、ヒッチコックは映画の歴史に革命的な変化をもたらした重大な作家だと言うことになり、「めまい」は彼の最高傑作だと評価されたのである。

ヒッチコックの生前の評価が高くなかったことの大きな原因は、彼の特異なパーソナリティにあったらしい。サム・タネンハウスによれば、ヒッチコックは、女優へのセクシャルハラスメントや暴力的な扱いをめぐって度々スキャンダルを起こし、世間の非難を浴びた。そんなことが、彼の映画人としての名声をも損なったということらしい。

しかし、死後かなりの時間を経て、その作品が客観的な目で見られるようになると、改めてその偉大さが評価されたのであろう。

ところで、イギリス映画協会は、もっぱら作品の芸術性を基準にして歴史的な大傑作を選んでいるという。これに対して、作品の芸術性のみではなく、興行成績をも勘案して選ぶべきだとする考え方もある。映画というのは、単に芸術作品のみならず、娯楽の種でもあるからだ。

そこで、興行成績をも勘案したうえで、歴史上で最も偉大といえる作品は何か。雑誌TIMEが、自己独自の観点からそれを選んだのが、1942年の作品「カサブランカ(Casablanca)」である。

ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが共演したこの映画は、筆者も見たことがある。単に見たというだけでなく、その魅力に取りつかれた。特にハンフリー・ボガートの男ぶりがすっかり気に入って、せめて外見だけでもその魅力に与ろうと、ソフト帽を被ったりしたものだ。だからこの映画が、総合評価で世界映画史上の最高傑作だといわれても異存はない。(写真はヒッチコック:Newsweek)

(参考)Alfred Hitchcock: The Psycho Genius of Hollywood By Sam Tenenhouse Newsweek
     The Best Movie of All Time Turns 70: Here's Looking at You, Casablanca By Ben Cosgrove TIME





コメントする

アーカイブ